はじめに


会社生活も終わりに近づいたある日、山道を車で走っていた時、道端でふわふわしていたオナガアゲハが目に留まった。

懐かしい想いで車を止めた時、路上で何か白いかげが動いた。
「イシガケチョウだ!!」 白っぽいジャリの中に溶け込むように擬態して翅を拡げている。

   

少年の頃、私の田舎では生息記録も無く、図鑑の中でしか見ることができなかった、私の憧れの蝶の一つであった。

急いでデジカメを取り出し夢中でシャッターを切った。

この出来事が、あの少年時代の日々を思い起こさせてくれた。

見たことのない蝶への憧れ、好奇心、探す時の期待感、出会えた時の感動、ネットインするまでの緊張感、あのときめきでる。

そしてこれが、蝶の生態写真を撮るきっかけになった。自宅の庭や行く
先々で出会った蝶の写真を撮りはじめた。

2005年5月、ミカドアゲハが自宅の庭の花で吸蜜しているのを見つけ写真に収めることができた。

当時は、それがどの程度珍しいのかさえ分からず、インターネットで調べていたところ、山口むしの会のホームページに行き着き、それが縁でその会に入会した。

以来、今まで出会ったことの無い蝶に会ってみたいという子供の頃の夢を果たすべく、
捕虫網をカメラに変え、会員の皆さんの助けも借り、積極的に新たな生息地にも出かけている。

自然の中で蝶を追いかけ、その成果を美しい記録として残すこと
は楽しい作業である。

色々な生態の写真を色々な花などと組み合わせ、構図を考えればきりが無い。

標本に比べてはるかに情報が多くその時の状況などが一層強く思い起こされる。

生態写真の魅力に取りつかれ、現在は、望遠用と近接用の二台のカメラを首と肩にかけ野山を歩き回っている。

一方、少しは世の中に役に立つことも、と、山口県内の昆虫の新しい生息地を探索したり、昆虫相の定点調査などを行い、これを記録として文献に残すことも行っているが、これも楽しみの一つになっている。

 




長野蝶紀行(
2006年)−初めての長野−

                                                   

友人で東京在住のUsさんに案内してもらえるということで、7月の連休を利用してHrさんと長野に出かけた。

予定の1516日の天気予報は雨確率70%、どうしようかと迷ったが、私は「晴れ男」何とかなるでしょう、と予定通り決行することにした。

14日早朝5時出発。

途中一宮近くで事故車による渋滞があったがそれでも午後2時には諏訪南ICに到着した。

運転の疲れは全く無い。

ただちに入笠山に向かった。

    

ふもとでも標高1000m、どんどん登る。大阿原湿原、何かいるかもしれないとカメラを手に探索開始する。

早速ウラジャノメが出迎えてくれた。

遊歩道の獣糞にキマダラヒカゲに混じってたくさん集まっている。

獣糞バックの写真ではと追い払い草の上に留まらせようとするがなかなか思うようにならない。

それでもなんとか数枚撮影した。

しばらくあたりを探索したが花も少なく他にめぼしいチョウの気配が無いので一旦チェックインしそれからにしようと原村のペンションに向かった。

4時到着。

遠出にはすでに遅いのでペンション周りを探索することにした。

100mも行かないうちにフタスジチョウ、つづいてオオミスジ、少しぶらつくとコヒョウモンモドキにヒメシジミ、他に見慣れたホシミスジやメスグロヒョウモンも、こんな宿の周りでこれほどのチョウにめぐり合えるとは、さすがに長野である。

6時に探索終了し、近くの温泉に入り、7時夕食、ビールで乾杯した。

部屋にはテレビもなくすぐに眠気がきて九時前にはすでに夢の中。

1日目が終了した。

2日目、天気が心配で五時前には目が覚める。

外をみると青空が!あの天気予報はいったい何だったんだ、やはり「晴れ男だ」

8時に諏訪南ICで牛込さんと合流、大白川林道に向かう。

10時前に到着。車を止めて近くを探索すると多くのセセリが忙しく飛び回っている。

その中の少し大きなキバネセセリを早速撮影する。

しばらく進むと数頭のゼフィルスが目の前の梢をチラチラ飛び回っている。

ウラキンシジミ、次いでジョウザンミドリシジミが葉上で停まっているのを見つけ撮影する。

河川工事の休憩所があり、作業員の方に「最近どうですか」と聞くと「雨上がりの時などこのあたりオオイチモンジが良く出るよ」との返事、俄然活気付き、更に林道を進むが、セセリ、キマダラヒカゲばかり。

アサマシジミのポイントではほとんどヒメシジミ、でもオスの瑠璃色、メスの燈色はさすがに綺麗で、写真に収める。

元の工事現場に引き返すと、エルタテハにシータテハ、続いてクジャクチョウにスジボソヤマキチョウ、大忙し右往左往である。

しかしお目当ての「オオイチ」はついに現れなかった。次に高ボッチ山に向かう。

展望台で記念撮影していると夕立が降り出したので
2日目の探索はここでやめて諏訪に向かった。

駅前のビジネスホテルへチェックインし、風呂でさっぱりした後近くの飲み屋で乾杯した。

翌日は長野地方は大雨雷注意報が出ており無理かもと思いつつ、行動計画を練った後10時頃就寝した。

3日目、朝、目が覚めると外は雨、やはり無理かと半分諦めたが、そのうちちょっと小降りになった。

「山梨の方はましなようですし長野地方も午後は少し良くなるでしょうから」と、7時にはチェックアウト。

近くのコンビニで朝昼食を仕入れ、諏訪湖のほとりで朝食をすませたのち、山梨県韮崎のミヤマシジミポイントに向かった。

途中降ったりやんだりだったがポイントでは、丁度止んだ。

早速周辺を探すがツバメシジミばかりで時期的にまだ早いようだ。つづいてツマジロウラジャノメのポイントに向かう。

サカハチチョウ、ホシミスジ、ミスジチョウなど普通種はいるが、ツマジロは現れなかった。雨こそ降らなかったが日が照らないとだめらしい。

時期的にも早すぎたかもしれない。昼飯を済ませて、再び諏訪方面に引き返し、霧ケ峰へ向かった。

雨は上がっているが、上の方は霧が立ちこめ、まるで天に昇るようだ。

池周辺を探索、草むらを掻き分けていくと、足元からヒョウモンチョウが沢山飛び出す。

追いかけて行って留まったところで撮影する。

少し下方に場所を変えたところで、アサマシジミ、続いてシータテハ更に進むとギンボシヒョウモンがアザミで吸蜜しているのに出会う。

5時近くなり、あまり遅くなり過ぎてもとここで全日程を終了した。

5時に現地出発、諏訪ICから高速に入る。帰りは成果に話がはずむ。

途中夕食休憩、トイレ休憩しながら岩国には夜中の一時半に無事到着した。

全走行距離約1800kmであった。





信州蝶紀行(2007年)−長野諏訪〜小淵沢〜高山市−



昨年に続いて、長野に出かけた。

今回は、新たにOmさんが加わり、Hr中さん、Usさんとの4名である。

オオゴマシジミ、ツマジロウラジャノメなどが主目的であり、これに合わせて84日、岩国を早朝五時前にOmさんの運転で出発した。

昨年同様、まず入笠山を目指し、午後3時頃には入笠高原に着いた。

ここでエルタテハなど昨年とほぼ同じ種の写真を撮った後、北杜市小渕沢のムモンアカシジミポイントに向かった。

既にかなり遅かったが、クリ、オニグルミの木などをを叩くとムモンアカシジミやオナガシジミが飛び出し、その内、ムモンアカシジミの交尾個体なども見つかり、撮影できた。

2日目、早朝5時、OMさんが、ミドリシジミを見に行こうと声をかけてくれたので、宿泊した原村ペンション「ファーブル」の主人から聞いたポイントに出かけてみた。

ヤマハンノキを叩くと数頭のミドリシジミが飛び出し、撮影できた。

7時前には、宿に帰り、大急ぎで朝食を済ませ、再度入笠山に向かった。

山頂下の牧場を抜け林道を進むと、次々と蝶が現れ、目的のツマジロウラジャノメも一頭見つかり写真にも収めることができた。

この日は、夕方には奥飛騨温泉郷に向かい、新穂高温泉の民宿に宿泊した。

3日目、オオゴマシジミポイントを目指し、七時に宿を出発した。新穂高ロープウェイ駐車場に車を停め、左俣林道へ入った。

一時間近く進んだあたりが、そのポイントで、数人の採集者がいたので様子を聞きながらその周辺を探索した。

   

時々現れるがなかなかとまってくれず、良い写真は撮れなかったが、証拠写真程度のは撮ることができた。

この周辺では、その他フジミドリシジミ、オオミドリシジミ、ウラキンシジミなどのゼフィルスも見ることができた。

午後三時過ぎに全日程を終了し帰途に付く。

岩国には夜中の一時過ぎに無事到着した。






対馬遠征紀(2008年)                            


対馬といえばツシマウラボシシジミにタイワンモンシロチョウ、一度は行ってみたい島である。

今回同行したGtさんは、対馬には過去何回も行っておられるが、写真を撮り直しに行かれるというのでお供することになった。

対象種に合わせて、出発は526日、新幹線、地下鉄、飛行機を乗り継いで昼前には対馬に到着した。

レンタカーを借り、すぐに空港を出発、万関橋近くのレストランで昼食をとった。

レストラン横のエノキの周りをゴマダラチョウが飛び回っている。

まず本命のツシマウラボシシジミの多いという北に向かい、Gtさんが過去によく見たという上県町佐須奈周辺を探索することにした。

何箇所かのポイントに入ったが、ツシマウラボシどころかほとんど蝶が目に付かない。

アオスジアゲハ、コミスジ、モンシロチョウといった普通種がたまに現れる程度、それでも対馬産だからと撮影した。そうこうしている内、立ち寄った林道沿いでミスジチョウが目に止まった。

対馬産は小ぶりで白帯が広くなる特長があり暫く撮影に専念したが、目的としたツシマウラボシは一向にわれなかった。

それではトンボを、と目を凝らすが、蝶以上にいない。ツシマウラボシは、時期的にまだ出ていないのか、それとも数が激減したのか。

暑い日が続いたため、川の水も少なく、全体に乾燥気味であるし期待できないかもとだんだん悲観的になる。

初日は、あまり成果無く宿舎に向かった。 

2日目、前日のことがあるのでもうひとつ元気が出ず、やっと9時前に出発。

観光もしておこうと、上対馬町の韓国展望所へ立ち寄り記念撮影した後、前日のポイント近くへ向かう。

      

川筋に入ってみたが昨日同様蝶の姿は見えず、ポイントを変えようかと話していたところ、「ヤンマ!」とGtさん、脇の草地に入って行った。

道端からそれを見ていたところ小さいものがチラチラしているのが目に入った。

「何か、ヤマトかもしれませんが、チラチラしていますよ‥」すぐに確認に向かったGtさん「ウラボシに間違いありません」。

とたんに元気が出て私も草地に突進。

Gtさんの指差す方を見ると、初めて見るツシマウラボシシジミの可憐な姿。

「これがツシマウラボシか、かわいいなあ」「あわてなくても逃げませんから」との声を耳に興奮気味にシャッターを切った。

ここでは3頭確認したが、発生したばかりと思われ、それではと、昨日のポイントに向かったところ予想通り現れてくれ、いろいろなポーズの写真を撮ることができた。

午後は、南に向かい、峰町、豊宝町とそれらしいポイントに立ち寄ったところいずれのポイントでも数頭を見ることができた。

豊宝町では、国道沿いの花に沢山のアゲハチョウが飛び回っており、さすがに対馬と思わせたし、偶然にもタイワンシオヤトンボも撮影出来た。六時頃予定通りホテルに到着、前日とは違ったビールを味わうことができた。

3日目、朝目が覚めると大雨、さらに風も強い。

これでは調査にならない。今度はいつ来られるか分からないし、予定していた場所だけでも見ておこうと、厳原町万松院を見学した後、迷蝶ポイントの豆酘崎に向かった。

    

豆酘崎に到着した頃は、雨風も弱まり、少しは探索出来たが、その内また雨風が激しくなったので空港に向かった。

予定の便は欠航でもう一泊することになったが、この遠征で確認した蝶は29種、トンボは5種で、初日のことを考えれば満足の対馬遠征であった。





奄美諸島遠征記(2008年)



6月23日からGtさんと奄美諸島に出かけた。

奄美諸島といえば、特産種のアカボシゴマダラが有名であるが、沖永良部のコノハチョウほか南方系の蝶がいろいろ期待できる。

福岡空港9時30分発、鹿児島空港で乗り換え、徳之島空港には12時に到着した。

すぐにレンタカーで県道83号を南に向かった。

天城町西阿木名で、脇道に入ってみたところ、私には初めてのアオタテハモドキやヒメシルビアシジミが遊んでおり、更に松の梢を滑空するアカボシゴマダラが目に入った。

アカボシゴマダラは、遠いため望遠での写真しか撮れなかったが、いきなりの本命出現でなかなかの幸先の良さである。

しばらく周辺を歩いたところ、タイワンクロボシシジミ、リュウキュウミスジなども現れ、撮影できた。県道を更に南下し、5時前には伊仙町に入った。

ここは、120歳まで生き、長寿世界一に認定された泉重千代の生誕地であり、先ずその記念碑(銅像)を訪れた。

   

この銅像のある周辺も蝶のポイントとなっており、しばらく探索したが既に遅かったこともあり、リュウキュウヒメジャノメと樹上を滑空するアカボシゴマダラが目に入ったくらいであったので、初日はこれで終了し、徳之島町のホテルにチェックインした。

2日目は、まず、前日中途半端で終わった泉重千代像周辺を再調査した。

ツマベニチョウ、アマミウラナミシジミ、リュウキュウアサギマダラ、シロオビアゲハ、ウスイロコノマチョウなどの南方種が次々と現れた。

その内、アカボシゴマダラが低いところを飛んでいるのを見つけ追いかけて行ったところ、樹間に入って行き、一瞬見失ったが、その辺を探し、交尾しているのを見つけ撮影した。

これで徳之島での探索は、終了し、徳之島空港15時20分発で奄美大島空港に向かった。

奄美大島空港からは、レンタカーで県道82号を南下、龍郷町赤尾木の脇道に入ったところで、新たにベニモンアゲハを見ることができた。

しばらく探索の後、奄美市の中心街名瀬の山羊島にあるホテルに到着し2日目を終了した。

3日目、アカボシゴマダラの生息地として知られている小湊に向かった。

ここでは普通種やこれまでに見た南方種に混じって、新たにナミエシロチョウを撮影できた。10時過ぎに、やっとアカボシゴマダラが現れ、産卵シーンも撮影できたので、次の目的地住用町に向かった。

11時過ぎに西仲間に到着、二級河川の住用川流域をところどころ探索しながら北上したが、アマミルリモントンボというきれいなイトトンボを見た程度で、特に新しい種を見ることはできなかった。

次いで湯湾岳に向かったが、天候が下降気味ということもあってか、ここでも蝶の姿は少なく、ここで探索は終了し、山羊島のホテルに帰った。

4日目、奄美空港10時35分発で沖永良部空港に向かった。

約30分で到着したが、空港に着くと大雨だったので、一旦、和泊町の宿にチェックインした。

午後4時ころになり、雨が止んだので、少し遅かったが、島の西部知名町にある最高地点大山(240m)に行ってみた。

ここには航空自衛隊の分屯基地があり、周辺は比較的人為が加わらず亜熱帯の自然環境が残されている場所である。

最高地点に着くなり、当島がその北限として有名なコノハチョウが現れた。

元々沖縄が本種の北限であったが、1980年代にここで発見され定着したとされた種で、人為的な移入の可能性もあるといういわくつきの蝶である。

5日目は、晴れ。

前日のポイント大山のふもとの人家近くの花場では何種類もの南方系の蝶が乱舞しており、これまでに見た種ばかりであったが、多くの写真を撮ることができた。

また、山頂に近いところでは、多くのコノハチョウを見ることができた。

午前で大山での探索は終わり、次に、島で2番目に高い越山に向かった。

島が一望にできる展望所公園が整備されており、ここには巻貝と少年と山羊という不思議な組み合わせのモニュメントがあり訪れる人も多いようだ。

   

公園内をしばらく散策した後、沖永良部空港1720分発、鹿児島空港、福岡空港経由、新幹線を乗り継ぎ、岩国には夜10時過ぎに到着した。

南方種については、鹿児島で、何種類かは見ていたが、鹿児島より南では実質初めての撮影旅行であり、初めて見る種も多く、記憶に残る遠征であった。




北海道遠征紀(2009年)                         



7
6日から宇部市のGtさんと大雪山麓を一周する計画で撮影旅行に行ってきた。

北海道は、観光では行ったことがあるが、蝶を目的に行くのは初めてである。


この時期は、春と夏の蝶の端境期になるということであるが、オオイチモンジには丁度良い時期であり、また場所を変わればそれなりに多くの種が見られるので初めての私にとっては良いでしょうというGtさんの考えからである。

旭川空港には、山口、広島からは直行便がないため羽田経由で行くことにした。

旭川には午後3時前に到着、レンタカーを借り、すぐに最初の予定地富良野に向かった。

富良野といえばラベンダー、丁度見ごろの時期であったがそこは素通りして午後五時前に布礼別川沿いの林道に到着した。

このポイントは翌日予定しているところであり下見をしておきましょうというのである。

かなり遅い時間ではあったが林道入り口付近では早速朱色鮮やかなクジャクチョウが出迎えてくれ、近くの地面では、エゾスジグロシロチョウ、シータテハなどが遊んでいる。

草つきでは、すこし大振りのエゾシロチョウが休んでいた。

楽しみを明日に残して最初の宿舎に向かった。

2日目、昨日のポイントに向かう途中の脇道に入ってみた。

チャバネセセリに混じってコキマダラセセリ、更に灰青色の大振りのシジミであるカバイロシジミ、ついで本土のものに比べると蛇の目は小さく全体に白っぽく一瞬別種のように見えるヒメウラナミジャノメが現れた。

ひとしきり撮影した後昨日のポイントに向かう。

ここでは昨日見た種のほかミドリヒョウモン、サカハチチョウ、コムラサキなどの見慣れた種に混じって、キバネセセリ、コヒオドシ、コヒョウモンなど撮影できた。

オオイチモンジはなかなか現れてくれなかったが12時頃になってやっと頭上に現れ高い梢に留まった。

肉眼ではほとんど見えず、300ミリ望遠でやっと確認できる。証拠写真にはなるでしょうと何枚か撮影した。

キベリタテハも現れたがこれは良いところに留まってくれず撮影できなかった。

そろそろ場所を変えようと移動する途中、車前方にミスジチョウが見えたので車を止めカメラを向けた。

するとファインダーに別の個体が出てきた。「もうひとつ何かいるみたいですね」「あれがオオイチですよ!ゆっくり撮ってください」とのGtさんの声を耳にはやる気持ちを抑えながらそろりそろりと近寄りシャッターを切った。

構図は今ひとつであったが、先ほどの遠目の写真に比べればまずまずの写真を撮ることができた。

昼食後はすこし南側に場所を移動し、畑脇の草地を探索した。

イチモンジチョウにトラフシジミ、本土のものとあまり変わらない様だが撮影しているとそこにコミスジが現れた。

こちらは本土のものに比べると白筋の部分が異常に幅広く別種のようにも見える。

続いて現れたのがカラスシジミ、留まっていたのはほんの一瞬であったが何とかシャッターを切ることができた。

ヒメウスバシロチョウが頼りなげに飛んでいるのを発見、今にも留まりそうだが一向に留まらない。

追いかけまわしていると遠くから「こちらにオオモンシロチョウがいますよ。ヒメシジミも!」とGtさんの声。

急いで駆けつけ畑の回りで飛んでいるオオモンシロを追いかけ留まるのを待って撮影、次いでヒメシジミもシロツメクサに留まったところを撮影した。結局ヒメウスバは撮れずじまいで2日目を終えた。

3日目、あいにくの雨模様、宿でゆっくりした後、それでは観光を、とラベンダー園に行ってみた。

丁度見ごろを迎えており、紫のじゅうたんを敷き詰めたような花畑はなかなか見ごたえのあるものであった。

雨はやんでもこの寒さでは蝶も出ないのは分かっているが、一応予定のポイントへは行ってみようということで、日高山系へ向かった。

予定していた千露呂川沿いの林道入り口あたりに着く頃には雨は上がっていたがさすがの寒さで予想通り蝶の姿はほとんど見えない。

ついでその日の宿泊地である帯広に向かった。

途中、千露呂川の河原で寝そべっているキタキツネの一家が気持ちを和ませてくれた。

   

日勝峠を越え、午後4時ころ帯広に到着。

その頃は気温も少し上がってきていたので翌日予定していた川西町のポイントへ向かった。

ここではウラジャノメが飛び回っておりその他カバイロシジミ、アカマダラ、コキマダラセセリなどを撮影し、6時ころ十勝川温泉のホテルに落ち着いた。

4日目、天候は曇りだが前日に比べ気温も上がってきており期待が持てる。

8時にホテルを出発し北部の長流枝(オサルシ)川沿いの林道に向かった。

クロヒカゲ、ヤマキマダラヒカゲが飛び交っている中を進み、予定地に着くと早速シロオビヒメヒカゲが姿を見せた。

近くにいたツバメシジミも本土のものに比べると裏の斑紋は小さめで表のブルーも変わっておりしばらく追いかけて撮影した。

林道を進むと普通種に混じってフタスジチョウ、ギンボシヒョウモン、コヒョウモン、ヒメウスバシロチョウ、アカマダラなどが次々と出てきた。

ヒメウスバは、ここでは花で吸蜜しているものが多く簡単に撮影できた。

小さな溝沿いでは青色のきれいなイトトンボ(後から非常に珍しいというカラフトイトトンボと判明)を見つけ撮影した

午後は、更に北の足寄町に向かい、芽登川沿いの林道などを探索した。すでに遅い時間とあってかクジャクチョウやエゾシロチョウなどはいたがここでは目新しい種は見ることができなかった。

これで4日目の日程を終わり六時頃宿泊予定地の糠平温泉に到着した。

5日目、朝目が覚めると大雨、さらに風も強い。

これではどうにもならないのでホテルで温泉に入るなどゆっくりし10時頃に出発、近くの東大雪博物館を見学し次の目的地層雲峡に向かった。

途中探索予定していた三股のルピナスが咲き誇る公園近くで昼食をとり、大函、小函などへ立ち寄りながら2時頃には宿泊予定地である層雲峡に到着した。

まだ時間があったので層雲峡を観光、たくさんの観光客に混じって滝などを撮影した後、少し早めではあったがホテルにチェックインし温泉でくつろいだ。

    

この日は蝶の成果はゼロであった。 6日目、最終日、雨はやんでいたものの気温はかなり低く、これでは蝶は望み薄であるが、一応予定していた上川町の案足間(アンタロマ)川沿いに愛山渓に向かう。

愛山渓温泉は、標高1000m、大雪山の登山口のひとつであり、目の前には雪渓が広がっていた。

草つきを歩いてみたがさすがに蝶の気配は全く無く早々にあきらめ帰途についた。

旭川空港で昼食、1時過ぎに出発、羽田空港、広島空港経由で夜10時前には帰宅した。


この遠征は雨と寒さにたたられ実質予定の半分くらいしか活動できなかったが、それでも41種の蝶を確認し、その内35種を撮影した。また雨のおかげ?で観光もできたので十分満足出来る遠征であった。

なお、この5日後、10名の死亡者を出した大雪山系トムラウシ山での中高年登山ツアー遭難のニュースが流れた。

6日、旭川空港に着いたときは気温30℃度を越え東京より暑かったが、それでも夜、特に雨でも降ると極度に気温が低下し、本度とは全く違うことを体験した遠征でもあった。





沖縄遠征記(2010年)


96日から四日間の予定で、沖縄に撮影旅行に出かけてきた。

私は、
20087月に行ったことがあるが、友人のGmさん、Knさんは撮影では初めてというので、前回と少し時期をずらして私が案内役ということで行くことになった。

福岡空港1040分発の直行便で12時過ぎには那覇空港に降り立った。

直ちにレンタカーで北上、15時頃目的地大宜味村に到着した。

空港では小雨模様だったが、その内雨も止み、大宜味村の民家の花場には、白紋の目立つナガサキアゲハやシロオビアゲハその他多くの蝶が飛び回っており、さすがに沖縄と思わせた。

饒波川沿いを上り、前回、フタオチョウなどを見たポイントに到着し探索を開始するとすぐに、リュウキュウアサギマダラ、リュウキュウミスジ、リュウキュウヒメジャノメなどに混じり、イワカワシジミが目に入った。

本種は、以前、西表島で破損した個体を見た程度で新鮮な個体を見るのは初めてであり、その何とも言えぬ若草色に感激した。

夕方までこの場所で探索し、そのほかアマミウラナミシジミ、タイワンクロボシシジミ、アオタテハモドキ、ツマムラサキマダラ、ウスイロコノマチョウ、ナミエシロチョウなどの南方種を撮影した。

この饒波周辺にはその後遠征期間中毎日訪れ、そのほかツマベニチョウ、ウスキシロチョウ、ウラナミシロチョウ、リュウキュウムラサキ、オオゴマダラ、オジロシジミ、クロボシセセリなどの多くの南方種を撮影できた。

ただ、前回見ることのできたフタオチョウは、時期的に悪かったのか見ることができなかった。

今回同行したKnさんは、専門はトンボであり、その撮影も今回の目的の一つであったが、このポイント近くの川淵や池周辺にはいろいろなトンボも多く、管さんのお陰で、オオハラビロトンボ、リュウキュウギンヤンマ、コシブトトンボ、コフキヒメイトトンボ、アカナガイトトンボなどを撮影できた。

2日目、午前中、前日と同じ饒波周辺を探索した後、午後は更に北方の国頭村に向かった。

与那川沿いの土手や農道の脇道などところどころ寄り道しながら、琉球大学演習林付近まで探索した。

ここでは、私にとっては初めてとなるリュウキュウウラナミジャノメを見ることができ、そのほかこれまでに見た種以外ではコノハチョウ、スミナガシ、タテハモドキ、ユウレイセセリなどの蝶のほかリュウキュウルリモントンボ、リュウキュウハグロトンボなどの南方系のトンボも撮影した。

2日目の日程をほぼ終了し、名護市のホテルに向かう途中、バナナ畑が目に入った。

バナナの害虫であるバナナセセリは、夕暮れ時になって活動するということを聞いていたので、時期的にはいるかどうか分からなかったが、寄ってみることにした。

18時を周り、夕闇が迫ってきた頃、バナナの樹上を飛び回る黒い影が目に入った。

バナナセセリだ!何頭もいるようだ。

その内、1頭が目の前のバナナの葉裏にとまった。

既に薄暗いのでフラッシュ撮影した。

その後も何頭かとまってくれいろいろな写真を撮ることができた。

Knさんは、捕虫網を取り出し追い掛け回していたが、何頭か採集したようだ。

本種は、全く予定していかった種で思わぬ成果であった。

3日目、今帰仁村乙羽岳(275m)に向かった。

ここは山頂部が森林公園として整備されており、展望台からは今帰仁村の町並みや青く広がる海、古宇利島などが
360大パノラマで見渡せる。

    

山頂まで車で移動しながら、探索したが、ここでも今回の目標の一つであったリュウキュウウラナミジャノメを見ることができ、その他多くの南方種を見ることができた。

次に乙羽岳の北側の玉城林道を走ってみた。

ここでも多くの蝶を見ることができたが特にナミエシロチョウ、ツマムラサキマダラが多く目に付き、ツマムラサキマダラは交尾写真も撮ることができた。

午前で今帰仁村を後にし、午後から名護市仲尾次にある真喜屋ダム、饒波、与那と一通りまわり3日目を終了した。

4日目、午前中、名護市の宿からほど遠くない真喜屋ダム周辺に行った。

前回、この周辺ではコノハチョウを多く見ることができたが今回は見当たらなかった。

新しくヒメシルビアシジミを撮影し、そのほか水辺ではコシブトトンボ、オキナワチョウトンボなどを撮影できた。

この後饒波に寄ったところで今回の探索は終了し、南下した。出発まで少し時間があったので首里城を見学し、那覇空港1530分発で帰途に付いた。

   

今回の遠征では、天候に恵まれたこともあり、蝶43種、トンボ19種を撮影できた。



信州蝶紀行(2011年)−諏訪〜小淵沢〜八方尾根−



45日の予定で、友人のGmさん、Knさんと信州方面に出かけた。私にとっては3回目の信州である。

82日夜11時前に新岩国駅で落ち合い出発、山陽道、名神、中央自動車道を走り、翌朝7時半ころ諏訪湖SAに到着した。

ここで朝食を済ませ、下諏訪町方面に向かった。

最初に行った霧ヶ峰高原では、小雨まじりだったが、次に向かった原村では雨も止み、民家の庭や空き地に植えられている花に、以前にも見た多くの蝶が訪れていた。

ここでしばらく撮影したあと、北杜市小渕沢のムモンアカシジミのポイントに向かった。

期待したムモンアカシジミはいなかったが、オナガシジミ、ミヤマカラスシジミ、オオムラサキなどを見ることができた。

2日目は、7時過ぎに宿を出発、入笠山周辺を探索した。

ここには過去に何回か来ているが、その時に見たウラジャノメ、ギンボシヒョウモン、クジャクチョウ、スジボソヤマキチョウなどのほか、新鮮なツマジロウラジャノメや、この時期では予定していなかったキベリタテハも1頭見ることができた。

3日目、今回の私の目標であったベニヒカゲを見られそうな場所として、Gmさん推薦の茅野市麦草峠(2130m)、坪庭(蓼科高原1770m)に行った。

ただこの日は、天気も思わしくなかったせいか、クジャクチョウが数頭姿を見せただけだったので、早々にそこは諦め、ムモンアカシジミが見られると聞いていた諏訪市大和に向かった。

携帯電話で、情報元のHrさんに、ポイントを聞きながら探していたところ、1頭のムモンアカシジミが樹上から降りてきて、目の前のヒメジオンで吸蜜を始めたので実況中継しながら撮影した。

ここではその他オオミスジ、ミヤマカラスシジミ、オナガシジミなどを見ることができた。

4日目、前日ベニヒカゲを見ることができなかったので、電話でHrさんに相談し、いくつかもらった候補の中から、八方尾根に行こうということになった。

中央道、長野自動車道を経由し、830分、白馬村八方尾根の駐車場に到着した。

   

ゴンドラリフトの乗車口八方駅には、結構多くの登山客がおり、それに混じって、兎平、黒菱を経由し第一ケルン(1830m)まで登った。

リフトの下の方には色とりどりの花が咲いており、時折、ベニヒカゲと思われる蝶影も見え、期待を持たせた。

リフトを降りると、ここからその横の斜面を探索しながら下っていった。コヒョウモン、ゴマシジミ、ヒメシジミなどが飛び出し、撮影した。

ゴマシジミは、鹿児島などで見ているが、これは翅表が青色であるのに対し、ここのは、別種と思わせる程黒く、ここに来た甲斐があった。

ただ、目指すベニヒカゲは姿を見せない。

それを求めてゲレンデを下っていくうち、雨が降り出した。

カメラを濡らしてはいけないので、ビニール袋でカバーしながら、兎平駅まで下り、しばらく雨宿りをした。

ほとんどの登山客はつぎつぎとリフトに乗り下っていった。

我々も半ば諦め、次のリフトで降りようかと話していたところ、やや小降りになった。

Knさんが、ちょっと最後にもう一度見てきますと出て行った。

私は期待していなかったが、しばらくすると、1頭いましたよ、と帰ってきた。

ソレっとばかりに飛び出す。

丁度雨も上がり、ベニヒカゲが、クガイソウヤシモツケなどの花の周りをゆったりと飛んでいるのが目に入り、それを追ってしばらく撮影した。

天気予報は、その日は、下り坂であり、一旦降り始めた雨は、もう止まないと思っていたので本当に幸運であった。

Knさんの執念にも感謝した。

5日目、朝方、小淵沢IC近くのポイントに立ち寄り、しばらく探索した後、帰途についた。

10時ころ出発、1830分過ぎに岩国に到着した。

    


信州蝶紀行(2012年)−諏訪〜富士山麓〜大白川−                               

友人のGmさん、Knさんと昨年の夏に続き信州方面に出かけた。

私の目的はホシチャバネセセリ、アカセセリなどの撮影である。


722日夜9時過ぎに新岩国駅を出発、翌朝、長野県駒ケ岳SAで朝食、7時過ぎには伊那ICを降り高遠の林縁の草原に入った。

朝つゆでズボンがビッショリ濡れた。

ヒメシジミ、オオミスジなどの蝶に混じって、ベニモンマダラガが目を引いた。

とても美しい昼蛾である。

次に、ミヤマシロチョウで知られる原村の赤岳山荘に行ったが、監視員の話では今年はまだ見かけないとのこと、見かけた蝶はホシミスジくらいであった。

原村周辺では昨年同様スジボソヤマキチョウ、フタスジチョウ、ミスジチョウ、ホシミスジ、シータテハ、クジャクチョウその他多くの蝶が確認できた。

次いで昨年ムモンアカシジミを見た諏訪市大和に向かった。

昨年に比べてチョウの個体数は少なく、期待したムモンアカシジミの姿は見られなかったが、カラスシジミ、オナガシジミ、シータテハ、ベニモンマダラガなどが見られた。

次に向かった霧ケ峰高原では時間が遅かったためか、蝶ではウラギンヒョウモン、コキマダラセセリくらいで、その他白い粉を噴いたようなゾウムシ(ヒメシロコブゾウムシ)を確認したにとどまった。

翌日は入笠山に向かった。

八時過ぎ に林道に入るとさっそくウラジャノメが現れ撮影する。

さらに進むとクジャクチョウ、ギンボシヒョウモン、コムラサキ、サカハチチョウ、エルタテハ、メスアカミドリシジなどが現れ、更に進むと昨年は少なかったツマジロウラジャノメがたくさんいた。

このポイントの近くの脇道では熊に出会い、幸い向こうの方が逃げてくれたが冷や汗をかいた。

ここでの撮影を終え、時間に余裕があったので昨年は登らなかった入笠山(1955m)に登った。

山頂付近ではキアゲハが遊んでいた以外にめぼしいチョウは見当たらなかったが、下る途中、花畑近くの登山道で新鮮なエルタテハが撮影できた。

数は少ないが、ハクサンフウロウ、ヤマハハコ、テガタチドリ、ミヤマウスユキソウ、イチヤクソウなどの高山植物も見られた。

3日目、8時に富士見町を出発、小淵沢経由で山梨県の富士山麓に向かう。

天気も良く甲斐駒ケ岳や入笠山が青空の中にそびえていた。

富士河口湖町本栖青木ヶ原樹海を過ぎたあたりに目指す草原の入口はあった。

違う林地に迷い込み午前中の半分を失ったが、その後その反対の道を進むと、お目当ての広大な草原が広がっていた。

草原を歩き始めてすぐに足元のノイバラの花吸蜜していたホシチャバネセセリを見つけた。

小さいのと枯れ草模様なのでよく見ないとわからない。

初めて見る蝶に感激しながら、撮影を済ませた。

草原で出会った人が、トラフシジミとミヤマカラスシジミの異種間交尾体を見つけたというので、案内してもらい撮影した。

そのうち、現地で長年昆虫調査しているという地元の方に出会い話を聞くと、目標としていたアカセセリは5年ほど前より姿を見なくなったとのことであった。

その夜は河口湖畔の老舗旅館「山岸旅館」で宿泊した。

4日目、予定ではこの日は、この周辺を歩き、そのまま帰る予定であったが、前日、ほぼ目的を達成してしまっておりここにいてもこれ以上の成果は期待できそうになかったので、急遽、松本市から岐阜高山経由で帰ろうということになった。

朝食、みやげもの店で買い物を済ませたのち松本市に向けて出発した。

途中、大白川林道に立ち寄る。

ここでは、キバネセセリ、クジャクチョウ、ヤマキチョウ、オオイチモンジ、キベリタテハなどが現れた。

夕方5時過ぎに安房峠に到着、周辺を探索したが、時間が遅かったようで、蝶影は少なかった。

安房峠を下った所の平湯温泉に寄り入湯!1日の疲れを癒し、そのまま高山へ下った。

6時半過ぎに高山市内に入ったが夕食の時間には少し早いので、世界遺産の「白川郷」まで行ってみることにした。

地図で見ると観光するには時間的にぎりぎりの距離である。

しかし、せっかくここまで来たのだから、間に合わなくても、と、燃料補給を済ませ出発した。

白川郷に着いたときには既に日が落ちていたが、大急ぎで展望台に上り、スローシャッターを使い何とか白川郷らしい風景を写しとめることができた。

   

食事は高山でということになり、大急ぎで引き返した。

すでに商店は大方閉店していたが、店じまいで入口付近にいた天ぷら屋の主人にお願いし、3人分の天ぷらを作ってもらった。

上客相手の老舗らしく、主人は「宝クジの当たった人(金持ちのこと)の来る店」と自慢していた。

気分が良かったのか、高価で貴重なイワタケもサービスで食べさせてくれた。

太っ腹なご主人ではあった。ビールが飲めないのが残念だったが、目の前で揚げてもらった天ぷらは大変おいしかった。

10時に高山市を出発。東海北陸縦断道、名神高速道路、山陽自動車道経由で翌朝七時頃新岩国駅に到着した。

走行距離は2100キロに及んだが、事故もトラブルもなく、気のあった同志での撮影旅行で、最高の旅であった。




ゴイシツバメシジミ観察記(2013年)

照葉原生樹林を代表する蝶ゴイシツバメシジミは、1973年に熊本県球磨郡水上村の市房山で発見され、大きな話題になり、学術的価値から1975年には国指定の天然記念物に選定された。

発見から僅か2年で天然記念物指定されたことでも分かるように、その稀少性は特筆すべきものである。

その後の調査から、内大臣峡、白髪岳、奈良の川上村、宮崎県の須木村からも発見されたが蝶類蒐集者の違法乱獲や森林伐採で発見後数年を経ずしてほとんどの場所で絶滅したとされる。

現在、内大臣峡と今回行くことになる市房山が残された棲息地であるが、ここでは1996年に設定された種の保存法指定種として厳重に保護されている。

以前からこの超希少種といえるゴイシツバメシジミを是非自分の目で見て撮影したいと思っていたが、Gtさんと出かけることになった。

最盛期は過ぎていたようだが、保護責任者の方に問い合わせたところ、まだ間に合いそうだということで急遽716日の早朝出発した。

九州自動車道を経由し水上村に入ったのは9時過ぎ、途中所々散策しながら目的地には10時頃到着した。

宿泊予定の市房観光ホテルの御主人が撮影観察ポイントを案内して下さった。 

ポイントは市房山麓の渓流沿いにあり500年以上は経過していると思える照葉樹木が自生する鬱蒼とした景観の地であった。

渓流沿いにはアサヒナカワトンボが見られオニヤンマも時折旋回しており、ヒメハルゼミの合唱も樹上から聞こえていた。

最初の観察ポイントはケヤキの大木の地上10m上で本種の食草となるシシンランが着生しているのが分かった。

ただ見渡せる場所が限られており、上向きで見るため首が痛くなり足元もやや不安定なため、長く同じ体勢を維持するには困難だったので一時間程度で次のポイントに移動した。

そこは山道を少し登ったところにあり、原生林に覆われた小さな渓流沿いの大木の約8m上の方で、ここにもシシンランが着生しているのが確認できた。

しばらく観察していると小さな蝶影が時々視界に入るようになり、300ミリの望遠レンズで確認したところどうやら目的種であることが判った。

時折チラチラする影を追い求めながら約一時間経過したところで,ダム湖沿いのレストランまで下り昼食を兼ねて休憩し、再び戻って観察を続けた。

高い樹木の間の木漏れ日を浴びながらチラチラするのは何度も確認できたがその日は結局下の方には降りてくれず、何とか証拠になる程度の望遠の写真しか撮れなかった。

   


一方、付近を探索していたGtさんが、側溝ぞいの枯枝に休む見なれないトンボを発見し、調べたところヤクシマトゲオトンボと分かった。これが初日の最大の成果であった。 翌日17日も朝から好天候に恵まれた。

10時頃から行動を開始したが状況は前日と大きく変わらず,樹間でチラチラ飛び回るだけだった。

しばらく付近を行ったり戻ったりしていたところ、Gtさんが、ヒメジォンの花に吸蜜に来ているのを見つけた。

ややスレのある♂だった。何枚か撮影するとどこかに消えてしまったが、これで何とか初期の目的を達することができた。

それから多少余裕も出てきて、路面に流れ出た水で吸水するミヤマカラスアゲハやキタキチョウ、ミドリヒョウモン、シータテハ、コチャバネセセリなどを撮影した。

コムラサキの黒化型も見つかり、前日見たトゲオトンボも付近に多く居ることが分かった。

午後からは、Gtさんは、ダム湖付近や渓流沿いを探索することで別れ、私は、できればもっと良い写真が撮りたいと、その場所で降りてくるのを待っていた。

3時を過ぎ、帰る時間が迫ってきても、結局、近くに降りては来なかった。

諦めて、Gtさんのいる下の方に向かったところ、出会った監視員が、昼頃この近くで見かけたと、草むらを教えてくれた。

まだいるかもしれないと探したところ、ヒメジオンで吸蜜している本種♀を発見した。

近寄っても逃げる様子もない。Gtさんにも携帯で連絡し、そこでしばらく撮影した。近くを探すと別の個体も見つかった。

これらの個体は、先に撮影していた♂に比べスレなどもなく、帰る間際になっての大ヒットであった。

16時を過ぎ2日間の予定を終了し、帰途についた。

初日はなかなか手ごわい蝶だと感じたが、結果的に目的を果たすこともでき、多少の生態も分かったことで満足できる遠征であった。

他の産地が消滅していく中で、当地では、独自の監視体制を取り、地域をあげて保全活動に取り組んでこられた経緯がある。

2012年に地元の方が中心となって「ゴイシツバメシジミの郷を守る会」が発足したが、今回案内していただいたホテルの御主人西和人氏は本会の会長であった。

現地を訪れて一番感じたことは,会員のみならず地元民そして監視員の皆さんが、地元の財産を守るという共通の認識で一丸となり活動に取り組まれているということだった。

来訪者に対しては皆気持ちよく接しておられ、共有のものとして啓発活動をされていることは大変素晴らしいことだと実感した。

これからも色々な難問も克服され末永く妖精が舞い続けることを願いたいものだ。

 




湯の丸高原から開田高原へ(2013年)


ミヤマモンキチョウは、本州中部北アルプス、浅間山系の高山帯に生息するため、自分の目で見るには登山が必要であり、半ば諦めていたが、Gmさんから、比較的行きやすいところで、ミヤマシロチョウも同時に見られるところがありそうだとの連絡をもらい、検討した結果、Knさんを加え三人で、浅間連邦の西側に位置する湯の丸高原に出かけことにした。

また、せっかく遠くまで出かけるのだから、帰る途中、蝶の名所として知られている開田高原にも寄ってみようということになった。

710日、ネット仲間のMnさんがオオウラギンヒョウモンを見たいとのことで、秋吉台を案内した際、その話をしたところ、Mnさんも717日から湯の丸高原に出かける予定とのこと、その結果を知らせてもらうことにした。

その後、Mnさんから予定通りミヤマモンキチョウ、ミヤマシロチョウを撮影できたとの情報と共に、詳しいポイントを書いたメモが送られてきた。

私たちは、729日、2週間近く遅いので、それがどう影響するかとの不安もあったが出発することにした。

17時岩国を出発、Gmさんと交互に運転し、途中休憩を繰り返しながら、翌朝、830分、湯の丸山登山口である地蔵峠の駐車場(標高約1700m)に到着した。

走行距離約830km

早速、ゲンレンデを登り、約30分後にMnさんから情報のあったつつじ平(標高約1850m)に着いた。

ここは、天然記念物に指定されている約60万株のレンゲツツジの群落があることで有名で、6月下旬から7月にかけては全土が燃え立つような紅色に染め上がるといわれている。

花は既に終わっていたが、ミヤマシロチョウは、結構多くいて、♂、♀、交尾、産卵など様々な生態写真を撮ることができた。

時々モンキチョウも目に付き、中にはミヤマモンキチョウと思われるのもおり、何枚かの写真を撮った。

そのほか、ヒョウモンチョウ、コヒョウモン、ギンボシヒョウモン、ヒメキマダラヒカゲなど多くの蝶も撮影できたので午後はここを後にし、池の平湿原に向かった。

この周辺を2時間近く散策したが、ここでは、多くのヒョウモン類のほかに、カオジロトンボという珍しいトンボも撮影できた。

その夜は小諸市の布引温泉に宿泊した。

夕食後、昼間撮影した写真を見返してみたところ、ミヤマモンキチョウと思っていたのが、いずれも普通のモンキチョウであることが分かり、翌日はミヤマモンキチョウが確実に見られると思われる湯ノ丸山山頂部を探索することに決めた。

2日目、朝7時半ころ宿を出発、地蔵峠周辺をしばらく探索し、ここで、コヒョウモンモドキやメスアカミドリシジミなどを撮影した後、湯ノ丸山登山に取り掛かった。

ゲレンデを登り始めたところで若い女性が上から降りてきて、湯ノ丸山に登ろうとしたが、道が分からなかった、一緒に連れて行ってください、というので一緒に登ることになった。

途中、Gmさんが私には初見となるアカセセリを見つけ、またエルタテハ、クジャクチョウ、フタスジチョウ、コキマダラセセリなども現れた。

つつじ平を過ぎると最初は急であったが、次第に緩やかになり、約30分で山頂(南峰2101m)に着いた。

若い女性が加わったこともあってか、思ったほど大変でなかった。

山頂は、結構広いガレ場で、何も遮るものが無く360度展望が開けており、遠く浅間山の噴煙も望めた。

この南峰から北峰にかけ、草地を探索したところ、時々ミヤマモンキチョウが現れた。少しスレた個体が多かったが、何枚か撮影した。

とまった状態では裏翅しか撮れないので♂が♀を追いかけているのを狙って飛翔写真も何枚か撮った。

   

3
日目、地蔵峠周辺をしばらく探索した後、開田高原に向かった。

ここで16時過ぎまで探索し、アカセセリ、スジグロチャバネセセリ、ウラゴマダラシジミなどを見ることができた。

その日は、御嶽山を正面に見ることのできる宿「ペンションビューおんたけ」で宿泊した。

   

4
日目、八時過ぎに宿を出発し、二時間程周辺を探索した。

ここでは新たにヤマキチョウ、ミヤマカラスシジミなどを見ることができた。

ここで全日程を終了し10時過ぎに開田高原を出発、2030分に無事岩国に到着した。

目的のミヤマモンキチョウ、ミヤマシロチョウのほか、アカセセリ、ヤマキチョウなども撮影でき、成果の大きかった遠征であった。

 


クモマツマキチョウ撮影記(2014年)



クモマツマキチョウ(クモツキ)は、蝶の生態写真を撮る上でどうしても撮っておきたい蝶の一つである。

2013年の山口むしの会総会時、クモツキに詳しいKwさんに、場所や時期などの情報をお聞きしたところ、一緒に行っても良いですよ、ということで、彼の都合と発生情報などから同年64日に信州へ出かけた。

天気その他条件は悪くなかったようだが、結局その時は、クモツキの姿すら見ることはできなかった。

2014年、丁度一年経過しチャンスがあれば行きたいと思っていたところ、522日(木)Kwさんから「今週末は信州の方、天気は良さそうだし、自分も週末休みが取れそうだ」との連絡、二つ返事でその日の夜出発することになった。

新岩国駅で落合い、最初の目的地を、比較的写真が撮り易いだろうと富山方面に設定し21時頃私の運転で出発した。

京都を過ぎ関ヶ原あたりで、しきりに携帯で天気予報をチェックしていたKwさんが、「明日、北の方はあまり天気が良くなさそうだ」ということで、目的地を南アルプスに変更し中央道に入った。

休憩、仮眠などしながら、翌朝7時過ぎに最初の目的地付近に到着した。

ここは比較的標高が低く、周りの山の雪解け状況から、もう遅いかもしれないということで、次の目的地に向かう。

あと数キロ地点に「道路が崩壊しており通行止め」の立札、そこでさらに次の目的地に方向転換したが、そこも「登山者の皆様へ」という立札、登山道が崩れており通行不能とのこと。

友人から聞いていたもう一つの場所は、相当歩かなければならないとのことで、南アルプスは、断念せざるを得ない状況になった。

翌日の富山に賭けて、今日は、ここらでその他の蝶でも見よう、としばらくウスバシロチョウやツマキチョウ、トラガなどを追いかけて写真を撮っていたが、ふとこれから行けそうな場所としてネットで見た大町市扇沢の名前が浮かんだ。

今から行っても午後になり、北の方だから天気もどうかわからないが、ダメもとで行きましょうということになり大町へ向けて出発した。すでに10時、岩国を出発してから700キロ以上走っていた。  

昼頃に扇沢に到着。

    

幸い、天気は、時折日が差す程度にかなり回復していた。駐車場に車を留め、最初のポイントへ歩いて行き、30分位、探し回ったが、スジグロシロチョウが時折姿を見せるくらいで、クモツキの姿は全くない。

場所を変えようと、駐車場に向かっていたところ、目の前を白い蝶が横切った。

スジグロかもしれないと思いながら、信州のスジグロの写真でも撮ろう、位の気持ちで追いかけて行ったところ、道端にとまった。

望遠で覗いたところ「クモツキ♀!」Kwさんも駆けつけ、すぐに飛び立ってはとまるのを追いかけながら写真に収めた。

♂ではないが、何とか目的達成である。

これで落ち着いて昼食でも食べながら待つことにし、あらかじめ買っておいた弁当を持ち、次のポイント近くで、二手に分かれた。

弁当を開こうとしていたところ、対岸に行ったKwさんから手招き、急いで弁当とカメラを持って駆けつけたところ、鮮やかなオレンジが目に飛び込んだ。生態では初めて見るクモツキ♂であった。

クモツキは、時折草木や石の上で休んだり、ミヤマスミレで吸蜜したりして、そのうちどこかに消えていった。

その内また何度か現れ同じような行動を繰り返した。

その度にカメラを持って追いかけ、何とか納得のいく写真を撮ることができた。

影者は、最初は我々のほか3名程いたようだが、我々が右往左往するのを見た人がだんだん集まり、一時は十人以上が一頭の蝶にカメラを向けるというような状況だった。

14時過ぎに友人のGmさんから、この時期ヒメギフチョウが蓼科高原で見られるとの電話をいただいた。

時間的に遅かったが、クモツキは堪能したので、行くだけ行ってみようと、茅野市に向かった。

着いたのは17時過ぎで、さすがにヒメギフは見ることができなかった。

クモツキ撮影はできたので、翌日は、予定していた富山は止めにし、岐阜方面で、新たな場所を探そうということにした。

塩尻で宿を予約し、近くのレストランで21時過ぎと遅くなった夕食を摂り祝杯を挙げた。

岩国出発から1060キロ走っていた。

翌日は、奥飛騨温泉郷に向かい、Kwさんは、クモツキの新たな生息地探索、私は、越冬種などその他の昆虫の写真でも撮ろうと、新穂高ロープウェイ駅駐車場に車を停め、通称左股林道へ入った。

しばらくは、昆虫らしい昆虫には出会わなかった。

林道脇の川の流れや雪渓、芽吹き始めた新緑、山野草を見ながらゆっくりと進んだ。

僅かに汗ばむが、ひんやりとした風が気持ち良い。

一時間くらい歩いたところで何か小さな赤っぽいものが飛んでいるのが目に入った。

コツバメでは、なさそうだが、と追いかけてやっと撮影したのは小さなガであった。

後に、友人のOmさんから「カバシャク」で、この時期にしか見られない結構珍しい種との連絡をいただいた。

林道に流れ込んでいる雪渓を横切り、更に進むと、キベリタテハ、コヒオドシ、クジャクチョウなどの越冬種やコツバメ、サカハチチョウ、ベニシジミなどが現れこれらを撮影した。

   

昼頃にはKwさんと合流し、レストランでゆっくりと昼食を済ませた後、集落近くを探索し、ウスバシロチョウなどを撮影した。

17時頃夕食を摂り、平湯温泉でしばらく休憩した後帰途に就いた。

休憩、仮眠をしながら、翌早朝出発地点の新岩国駅に到着。全走行距離約2000キロの撮影旅行であった。

 


八重山遠征記(2014年)



アサヒナキマダラセセリ(以下アサヒナ)は、石垣島と西表島にのみに生息し、年1回、5月上〜下旬に発生する稀少種で、沖縄県指定天然記念物に指定されている蝶である。

私は、八重山諸島には蝶の撮影では過去3回訪れているが、いずれも秋で、一度はこの時期に行きたいと思っていたところ、友人のKnさんから、一緒に行きたいとの話があり、二人で行くことにした。

Knさんは八重山諸島は初めてであり、私が案内役である。

57日、福岡空港からの直行便で石垣空港に二時過ぎに到着、レンタカーを借りて、先ず近くのバンナ公園に向かった。

花場に行くと、ベニモンアゲハ、リュウキュウミスジ、オオゴマダラほか多くの南国の蝶が出迎えてくれた。

夕方までここで過ごしたのち、定宿にしているホテルミヤヒラにチェックイン、初日を終えた。

8日、本命のアサヒナを求めて於茂登岳方面に向かった。

アサヒナの発生地は、於茂登岳山頂付近で、以前は尾根まで登らないと見られなかったが、近年、麓の方でも結構見られるようになったと聞いていた。

この日は、友人から聞いた真栄里付近の麓の方を探索し、もし見つからなければ、翌日は登山の予定であった。

ヤエヤマサナエなどのトンボなど撮影しながら林道を進むと、草原にとまったアサヒナを発見、その内センダングサにとまった個体も見つかった。

いきなりの目的達成である。

この林道でしばらく過ごした後、川平に向かった。ここは石垣島では屈指の観光地であるが蝶のポイントとしても知られたところである。

    

しばらく探索した後、Knさんは初めてということだったので、観光も、ということで川平湾の砂浜の方に出てみた。

エメラルドグリーンに輝く湾内は何とも美しく、しばらく眺めていたが、ふと砂浜脇の草地を見ると、センダングサで吸蜜する迷蝶のキミスジが目に入った。

これまでに見たことがある種であるが、いずれも木の上の方にとまっているようなものばかりで、このように花にとまったのは初めてだった。

良い写真が撮れた。

次に山原に向かい、小高いところにあるレストランで、海を見ながらゴーヤチャンプルの昼食を済ませ、近くのポイントに入った。

車を停め、降りるとすぐにアサヒナが目に入った。しかも数個体、こんなところで見られるとは驚きであった。

葉上や花に、翅を開いたり閉じたり、いろいろな写真を撮ることができた。その他コノハチョウやクロテンシロチョウなど南国の蝶を何種類か撮影し、バンナ公園経由でホテルに帰った。

翌日は、登山の必要もなくなったので、もう一度石垣島を探索しながら一周し、夕方与那国島に向かった。

与那国島では、2日滞在予定のところ濃霧で1日延期を余儀なくされたが、おかげで与那国の友人のSjさんの助けもあり、タイワンアサギマダラが撮影できた。 

  

その後石垣経由で西表島に渡り、2日間探索し、遠征を終了した。

         

今回の主目的であったアサヒナには西表島でも出会うことができ、その他、この時期に予想される種についても大部分を撮影できた。

その数は71種であった。

 


ウスバキチョウを求めて北海道再挑戦記(2014



ウスバキチョウは、北海道の大雪山系・十勝岳連峰の標高1700m以上の高山帯のみに生息する蝶で国の天然記念物に指定されている。

他の蝶が、一般に年に1〜数回発生するのに対し、本種は、1年目は卵の状態で越冬し、翌年孵化しその年に蛹化しその状態で越冬し、翌年の夏、即ち3年目にようやく成虫になるという特異な生態の蝶である。

成虫で見られるのは、5月下旬〜7月に限定されることなどから、この限られた時期にしかも登山となると自分には見ることができない蝶と思っていた。

そんな中、ネットで知り合いになった守山市のMnさんから、ご案内しますよ、という連絡をいただいた。

Mnさんは、大学時代に百名山を踏破したという登山家で、北海道には毎年数回は通っておられ、蝶などの写真は、その合間に撮っているとのことである。

私は、北海道には2009年に蝶撮影目的で行き、これについては先に掲載しているが、この時は天気が悪く、予定の半分くらいしか活動できなかったこともあり、ウスバキチョウ以外にも見ていない種が多いので、それでは是非とも、とお願いした。

同じネット仲間の尾道市のMsさんも行きたいとのことだったので3人で行くことになった。

前回とほぼ同じコースで私が計画し、Mnさんに手直しなどしてもらった。 

出発は、ウスバキチョウの発生時期にあわせて625日とした。私とMsさんは、広島空港八時に出発し、新千歳空港には10時過ぎに着いた。

すぐにレンタカーを手配し、関空から少し遅れて到着されたMnさんと合流し、最初の探索地日高山系へ向かった。

前回は、天気が悪く、見るだけに終わった千呂露川沿いの林道を奥深く進んでいった。エゾシロチョウ、コヒオドシ、シータテハなどが次々と現れ、それを撮影しながら進むと、フキの葉上で休むカラフトタカネキマダラセセリの♂に出会った。

初めて見る種である。続いて♀も現れ、撮影する。

その後、これも初めての種であるホソバヒョウモンも撮影できた。

ほぼ日程を終え、当日の宿泊場所である帯広に向かおうと車で移動途中、運転していた私は、何となく予感がして、車を停め近くを探索したところ、Mnさんが岩場のガケにとまっているエゾツマジロウラジャノメを見つけた。

最初の場所では、本種が見られるとのことで、注意して探したが見ることができなかったのに、かなりはずれたこの場所で見ることができたのである。幸運であった。ホテル日航ノースランド帯広で宿泊し、翌日は、芽室町伏美仙境に向かった。

ここでは、ホソバヒョウモン、オオイチモンジなどの他、数10頭ものミヤマカラスアゲハが集団吸水しているのに遭遇し、さすがに北海道、と驚いた。

時間に余裕があったので、前日予定していながら時間がなく寄れなかった日勝峠のジョウザンシジミポイントに行くことにした。

到着した時、先に来ていた人が、昔の面影は無くなっており、ここにはいない、と教えてくれた。仕方がないので、近くの似たような環境のところへ行き、探してみた。

シロオビヒメヒカゲなどを撮影し、帰ろうとした時、Msさんが、何か小さいのが飛んでいます、というのでその影を追った。

「ジョウザンシジミ!」。

伏美仙境で出会った人から、ジョウザンシジミはピークを過ぎており見るのは難しいでしょう、と言われほとんど諦めていた種に会うことができたのだ。

それから帯広に引き返し、最後に川西町付近を探索した。

前回、ウラジャノメやカバイロシジミを見た場所である。

今回は、これらは見当たらなかったが、多くのアカマダラやコキマダラセセリなどを見ることができた。

この日も前日に続き帯広のホテルに泊まった。

3日目、ホテルを出発し、長流枝内に向かった。

ここは、前回結構いろいろな種類を見ることができ、密かに期待していた場所である。

しかし、道路や道端の草地などかなり整備され、そのためか、蝶は、殆ど見ることができなかった。

次に向かった足寄町周辺も同様で、以前とは、環境が変わっており、普通に見られる種類しか見ることができなかった。

この日はたいした成果もなく、十勝川温泉の笹井ホテルにチェックインしたが、ここでは、3m近くもある大きなヒグマの剥製が出迎えてくれた。

4日目、然別湖周辺を探索したが、この日は、時折小雨が降るような天気で蝶の撮影は諦め、ハクサンチドリ、ヒメウギアヤメ、タカネバラ、グンナイフウロウ、カラマツソウなどの山野草の写真を撮り、早めに宿泊予定の糠平館観光ホテルにチェックインした。

5日目、今回の遠征の主目的地である層雲峡に向かう。

途中、大函駐車場付近で記念撮影した後、ニセイチャロマップ林道に入る。

   

Mnさんが林道入車許可を取っておられたのでかなり奥まで車で入り、そこから探索を始めた。

特に新たな種は見つからなかったが、多くの蝶に出会うことができた。

その日は、北海道の蝶の情報をいろいろ聞けるという層雲峡のペンション山の上で泊まった。

6日目、予定ではこの日ウスバキチョウの生息するコマクサ平に登る予定であったが、雲の様子などから、翌日に延ばすことにし、この日は、ペンションで聞いた情報を元に、置戸町鹿の子ダム周辺を探索した。

情報通りに、新しくカラフトヒョウモンを見ることができたし、その他多くの蝶に会うこともできた。

7日目、いよいよコマクサ平である。登山口の銀泉台まで車で移動し、630分登山開始する。

途中二か所ほどある雪渓は、かなり急斜面で、足を滑らせたら大変なことになる。

ストックでしっかり支え、一歩一歩踏みしめながら慎重に足を進めそれを横切り、更に登って8時過ぎに目的地に到着した。

途中で高山植物なども撮影しながらゆっくり登ったせいもあり、思ったほど疲れなかった。

   

早速、ダイセツタカネヒカゲを見つけ撮影、ウスバキチョウも時折現れるのでできるだけ近寄って撮影する。

コマクサ平は、遊歩道が規制されており、そこからはみ出すことは許されないので、望遠での撮影が結構多くなった。

両種とも、少しピークを過ぎていたようで、スレたものが多かったが、何とか写真に収めることができた。

アサヒヒョウモンも期待したがこれは見られなかった。

余裕が出たのでコマクサなど山野草の撮影もした。その内、雲も出てきて、蝶も姿を見せなくなったので、早めに下山した。

その後、ペンションで聞いていたオオイチモンジポイントに行って見たところ多くのオオイチモンジがいて驚いた。憧れのウスバキチョウを撮影でき、また多くのオオイチモンジも見られて大満足の一日だった。

8日目、富良野に向かう。途中、彩香の里へ立ち寄り、丁度満開であったヒマワリなどを見た後、前回最も多くの蝶を見た布礼別川流域、オンコ沢川流域を探索した。

前回とほぼ同じようにいろいろな種を撮影できた。

この日の宿泊は十勝岳連峰中腹にある吹上温泉白銀荘で、ここの温泉はこれまでで最高と思えるほど素晴らしい温泉であった。

近くに、自然の温泉「吹上の湯」があり、ここには1999年に家族旅行で立ち寄った温泉であり、懐かしく思った。

9日目、Mnさんは十勝岳縦走というので、登山口まで送って行った後、松下さんと、前日と同じ布礼別川流域周辺を探索した。

多くの蝶に混じって、それまで見ることのできなかったカバイロシジミも見つけることができた。 

最終日、富良野を早めに出発し、札幌近郊のリンゴシジミポイントに立ち寄った。

それらしいのが居てその都度喜ぶが、いずれもカラスシジミで、リンゴシジミはすでにピークを過ぎていたようだった。

全日程を終了し、夕方の航空便で帰途に就いた。撮影種は50種で、その内、初めてのは本命のウスバキチョウほか8種あった。非常に実り多い遠征であった。



信州蝶紀行(2015年)−ヒメギフチョウ撮影記−


23日の予定で、友人のMnさんと信州方面に出かけた。

主目的は、私には未撮影種であるヒメギフチョウだが、この時期可能性のある、ホソオチョウ、チャマダラセセリ、ヒメシロチョウも視野に入れた計画とした。


56日深夜岩国を出発、途中仮眠し、翌7日朝7時過ぎに栗東に到着した。

ここでMnさんと合流し、近くのホソオチョウポイントに行ってみた。

Mnさんが425日に1頭確認しておられるということで期待していたが見当たらなかったので早々に諦め、当初は予定していなかった開田高原のチャマダラセセリの保護地に寄ることにした。

ここのチャマダラセセリについては、昨年確認されたのが1頭だけで厳しい状況になっており、立ち入りも禁止になっていると聞いていたが、ここは2013年夏に立ち寄りヤマキチョウ、アカセセリなどを撮影した場所でもあり、状況だけでも見ておこうとしたのである。

中津川ICで中央自動車道を降り、国道19号(旧中仙道)、361号経由で午後1時頃にその保護地に到着した。

当地一帯は、食草のキジムシロを残し綺麗に草刈され、以前見た周辺の雑木もかなり伐採されており、情報通り立ち入り禁止となっていた。

気温がやや低かったこともあるがチョウの気配は全くなく、非常に厳しい状況を感じると同時に本種の復活を願った。

近くからは、残雪に輝く御嶽山が望まれた。

   

昨年の噴火大災害に思いを馳せながらここを後にし、国道361号、中央自動車道伊那IC〜小淵沢IC経由で、ヒメシロチョウの可能性があるというポイントに向かい、15時過ぎに到着した。

しばらく探索したが、時期的にまだ早かったようでツマキチョウが目につくくらいで本種は確認できなかった。

過去に数回訪れ、ムモンアカシジミ、オナガシジミ、オオムラサキ、ミヤマカラスシジミなど多くの蝶を撮影したことのある場所が近くだったので、寄って見たところ、以前たくさんあったオニグルミの木は殆ど伐採され、小木や草で覆われていた休耕地はすっかり整地され、以前の面影は全くなくなっていた。

これでは良い時期に行っても多くのチョウは見られないだろうと残念な気持ちになった。

この日は早々に切り上げ、1630分に宿に入り初日を終えた。

翌二日目は、原村周辺のヒメギフチョウの探索である。

8時過ぎに宿を出発、富士見パノラマスキー場のゴンドラに乗り、山頂部を目指した。

先ず山頂駅近くを探索、続いて入笠湿原からお花畑、山頂駐車場周辺を歩いてみたが、ヒメギフチョウどころか他のチョウの姿も殆ど見られなかった。

気温が少し低かったためか時期的にずれていたかは分からない。

カタクリは見頃でありこれらの山野草を撮影しただけで下山し、次に立場川キャンプ場周辺を探索することにした。

   

はっきりとしたポイントがわからずそこらを歩き回っていたが、その内に、Mnさんから、いました、という連絡を受けそちらに向かった。

地面にとまり翅を休めているのを何とか撮影する。その後近くで時たま飛翔するのを見かけたが、なかなか良いポーズにはならない。それでも時々地面や笹の葉上に止まりかけるのを追いかけ、何枚か撮影できた。

ここでは、その他、スジグロシロチョウ、ツマキチョウ、シータテハ、ルリタテハ、ミヤマセセリなどを撮影した。

弁当昼食を済ませ、午後は、その他のヒメギフチョウ、ヒメシロチョウポイントを何箇所か回ってみたが、結局両種とも見ることはできず、午后四時頃には、宿舎の入笠湿原YHに入った。

この宿舎は、初めてであったが、内装も綺麗で、食事も良く、また、ここからは正面に八ヶ岳全景が望め、なかなか良いホテルであった。

        

三日目は、チャマダラセセリの産地として知られている富士山の北側山麓に向かった。

ただ天候も今一つで気温も低かったこともあってかチョウの姿は全く見られなかった。

その後、2012年にホシチャバネセセリを撮影したポイントが近くだったので訪れてみた。

チョウの姿はなかったが、草原に入ると、正面に雲で霞んだ富士山が現れ、しばらく撮影などして過ごした後、帰途についた。
    

昼過ぎに富士宮ICに入り、午後四時過ぎに栗東到着、ここでMnさんと別れ、夜10時頃に帰宅した。

全走行距離1840kmの遠征旅行だった。


北海道遠征記(2016年)
                                       北海道で見た蝶    北海道で見たその他の昆虫

2014年にウスバキチョウを求めて行った同じメンバーで、自身としては3度目となる北海道遠征をした。
今回の目標は、まだ撮影したことのないイシダシジミ、カラフトルリシジミ、リンゴシジミ、キタアカシジミ、カラフトセセリである。
これらの発生時期に合わせ、出発日を74日とし、この時期、雨などの天候も考慮し、予備日を設けながら11日間とした。


1日目、早朝5時過ぎに自宅を出発、JR、リムジンバスを乗り継ぎ、広島空港でMsさんと合流、直行便で北海道に向かった。新千歳空港には11時前に到着、レンタカーを手配し、ここでMnさんと合流した。

最初の探索地は、前回、リンゴシジミを狙って行ったことのある早来である。前回より時期的に遅いので可能性は低いが、他にカラスシジミなどの種が見られる場所で、空港に近いこともあり選んだ。天候は曇り、その上風が強く、気温もかなり低く、寒く感じるくらいであった。そのせいもあってか、蝶の姿は全く見えず、そのうちクロヒカゲが1頭飛び出しただけであった。ここは早々に引き上げ、次の目的地、キタアカシジミの産地として情報を得ている小樽石狩浜に向かった。

午後3時頃に石狩浜のポイントに到着、直ちにカシワ林に入り、探索したが、ここも早来と同様、気温が低いこともあってか、ヒメウラナミジャノメ、コキマダラセセリが目に入った程度で蝶の姿がほとんどなく、期待していたキタアカシジミはその気配すら無かった。気温だけのせいではなく、時期的にまだ早すぎたのかもしれない。ここは、今回の遠征の最後にもう一度訪れることになっているのでその時に期待して、4時過ぎにはここを出発し、初日宿泊予定地の層雲峡に向かった。

宿所は、前回も利用した「ペンション山の家」で、ここでは、ポイント情報などが得られるので、それに期待した。ここの主人の第一声は、「今はアブもハチもいないよ」というもので、例年なら、オオイチモンジを230頭は、見ているのに、今年はまだ1頭も見ない、という極めて悲観的なものだった。北海道は、4月から6月にかけて、寒波、猛暑、大雨といったこれまでに例がないほどの急激な気象変化に見舞われ、これが影響して春先の種がかなり死滅したのでは、ということであった。明日からの天候の回復を祈りながら全く成果の無かった初日を終えた。

2日目、朝、外に出てみると、雲一つない青空が広がっていた。これなら気温も上がり、これまで出そびれていた種も出てくるのではと早々に朝食を済ませ、目的地の遠軽町に向かい出発した。途中、宿の主人から聞いた国道沿いのリンゴシジミポイントに立ち寄り、スモモの木を叩いてみるが現れず、イシダシジミが見られるという自衛隊演習場に向かった。ここには予め入場の許可願いを出しており、当日は、隊員の方が付き添ってくれるということになっていた。待ち合わせの10時に到着、迎えてくれた隊員の案内で、イシダシジミポイントに向かった。隊員の話では、ここ数日、注意して見ていたが、見かけないとのこと、やっぱりダメか、と思いつつ、カメラなどの用意をしていたところ、早めに草原に入っていったMsさんから、「いましたよ」の声、急いで行ってみると、発生したばかりと思われるイシダシジミが目に飛び込んできた。前日は123℃しかなかった気温も、当日は、出発時には16℃位あり、着く頃にはそれ以上になっていたので、期待通りになったのである。その内、また1頭、また1頭と現れ、撮影を堪能した。これで、今回の遠征の目的の一つを達成できたとの安堵の思いが込み上げ、今後に期待が膨らんだ。

1時間で、ここを後にし、次に、カラフトセセリが見られるという、公園に向かった。公園駐車場に車を止め、降りたところ、小さな赤みがかったセセリが目に入った。カラフトセセリである。本種は1999年、道北滝上町で初めて確認された種で、大陸から飛来してきたか、牧草に紛れて入ってきたのでは、と言われる移入種で、その後分布を拡大している、牧草などの害虫とされている種である。その由来からかなり大きなセセリではと予想していたが、それに反して、非常に小さく、またオレンジがかった翅表も予想以上に綺麗で、公園のコウリンタンポポにとまった本種を繰り返し撮影した。これで目的種の2種目を撮影できたことになった。

ここで約30分過ごした後、花畑や果樹園などがあるというマウイ山荘に向かった。花畑では、エゾシロチョウ、サカハチチョウなどの普通種しかおらず、裏の果樹園に行ってみることにした。果樹園には入ることはできなかったので、周りの道路沿いを見て回っていたところ、スモモの木が目に入った。Msさんが用意していた釣竿で叩いて行くと、「リンゴシジミ!」。時期的には、もう遅すぎ、ほとんど期待していなかった種である。ややスレ気味であるが、初めて見る種で、撮影にも力が入った。近くの木からも現れ、望遠ではあるが、何とか証拠写真を撮ることができた。
初日にして、これで目的の3種を撮影できたのである。


この後、当初は3日目に予定していた近くの前田の沢、オロピリカ沢沿いの林道を探索した。普通種の他、前田の沢では、前夜、宿の主人からまだ1頭も見ていないと言われていたオオイチモンジが現れ驚いた。残念ながら撮影は出来なかったが、昨日までの低温続きだった天候が一気に回復したことによるものと、今後に期待を持たせるものだった。
2日目の宿は、瀬戸瀬温泉、行く人も少ない秘境の温泉宿ということで、ここで2泊することになっていた。宿泊客は、我々3人のほかに1人だけで、温泉にゆっくり浸かり、大成果の2日目を終了した。


3日目、当初の予定地は、2日目に行って、それほど面白くなさそうだったので、予備に計画していたオホーツク海沿いのサロマ湖周辺に行くことにした。サロマ湖は、沿岸流により堆積した砂で形成された約25kmの砂嘴(サシ)で海と湖が仕切られてできた湖で、この砂嘴の西側には、三里浜竜宮台公園が、東側にはワッカ原生花園がある。

8時過ぎに西側三里浜竜宮公園に到着。ここはカシワ林が続いており、キタアカシジミの生息地として知られている場所である。情報として得ていたカシワ林を上から見下ろすことができる場所に行き、探索を開始した。カバイロシジミが現れ、しばらく撮影したあと、一通り探索したが、期待したキタアカシジミは全く現れなかった。次に西側のワッカ花園に向かった。自転車を借りて砂嘴の東側先端部まで行きながら、花や鳥を撮影したが、ここでも蝶はほとんど見ることができなかった。


ここで昼食を撮った後、遠軽町に戻り、生田原から瀬戸瀬温泉に向かう林道(R592)沿い、次に途中から武利意越林道に入ってみる。少し進むとウラシマナイ林道との分岐点に着く。ここで車を停め、しばらく周辺を探索した。ここでもカラフトセセリを見ることができ、分布域がかなり広まっているように感じた。シロオビヒメヒカゲその他に混じって、オオイチモンジが現れた。昨日と違って、地面で吸水しており、望遠ではあるが撮影できた。3日目の最大の成果であった。

4日目、この日は、雨も考え予備日としていた日であったが、天候も良く、層雲峡周辺を探索することにした。瀬戸瀬温泉から山越えで生田原方面に向かい、R242R39を経由して層雲峡に向かった。途中、厚和から武利岳登山口に向かう道に入り少し探索した後、再びR39に戻り、石北峠を越えて、沼ノ原に向かう林道に入った。途中の草地などを探索しながら沼ノ原登山口まで進んだが、ホソバヒョウモンその他普通種を見たにとどまった。来た道を引き返し、大函に立ち寄り記念撮影したあと、ニセイチャロマップ林道に入った。前回来たことのある林道で、その時に比べ蝶の種類も個体数も少なかったが、ヒョウモン、クジャクチョウ、コヒオドシなど代表的な種は何とか撮影できた。

まだ時間があったので、前回、オオイチモンジを見たところに行ってみることにした。R39を北上し、層雲峡を過ぎ上川町方面に向かう途中の林道であるが、奥の方に入ると、キタキツネの子供がこちらを見ている。カメラを向け撮影していると、その脇の地面で何かが吸水している。オオイチモンジだ。近寄っても逃げる気配がないので、マクロで撮影できた。時間帯も、丁度良かったようで運が良かった。これで4日目を終了、宿所の層雲峡YHに向かった。


5日目、今回の遠征目的の一つであるカラフトルリシジミの撮影のため、然別湖方面に向かう。然別湖の奥の方にある東雲湖周辺か東ヌプカウシヌプリ山頂付近に生息地があるとの情報で、できれば登山しなくても良い東雲湖に行けたら、と期待していたが、東雲湖に行ける船は、既に数年前になくなっており、迂回して歩いて行く道も今は通行禁止になっているとのことで、東ヌプカウシヌプリ登山となった。東ヌプカウシヌプリ山は、北海道100名山の一つである。

930分頃、白樺峠登山口(標高900m)に到着、道端の駐車スペースに車を停める。ここは前回も来ているが、その時は雨で、蝶はほとんど見られず、山野草などを撮影して帰ったところである。今回は、幸い天気も良く、期待に胸を膨らませ、登山を開始した。ところどころ倒木を迂回しながら岩や木の根混じりの道を登っていく。しばらくは鬱蒼とした樹林帯が続くが、その内、稜線に近づくと視界が広がり、東大雪の山々や、遠く、雌阿寒岳や雄阿寒岳の山容が広がる。登山口出発から約1時間で山頂(標高1252m)に着いた。山頂は木立に囲まれており、あまり見晴らしは良くないが、そこから目的の岩場に向かうと、十勝平野が眼下に広がっていた。


岩場に着き、早速探索する。カラフトルリシジミの食草のガンコウランは多く見られるが、本種は結局、見られず、カラフトタカネキマダラセセリやハクサンシャクナゲで吸蜜するエゾシロチョウなどを撮影したにとどまった。また、この岩場はナキウサギの生息地として知られているところでそれを目的に登る人もいるということであったが、この時は、何度か鳴き声は聞いたが、姿は見ることができなかった。13時半過ぎに下山開始、約1時間で登山口についた。


まだ時間はあったが一旦、糠平温泉まで引き返し情報収集を兼ねて、ひがし大雪博物館を訪れた。ここには大雪山の動物、植物のほか、世界の蝶などの昆虫標本も展示されており、なかなか見ごたえのある内容であった。ここでカラフトルリシジミの情報を聞いたところ、白樺峠近くにある駒止湖も可能性がありそうだとのことだったので、再度然別湖方面に向かった。蝶の姿はなかったが、運良くナキウサギが現れた。カメラを向けても逃げる気配もなく、撮影できた。


5時過ぎには、当日の宿東大雪ぬかびらYHに到着、温泉で疲れを癒し、4日目を終了した。
この日は、カラフトルリシジミに振られただけでなく、運が悪いことにダニに噛まれた。近くに医者はいなく、気がついたときは既に夜で、どうしようかと迷ったが丁度Msさんが、ピンセットの良いのを持っておられたので、それで引き出すことにした。Mnさんが前回ダニに噛まれ、手馴れた宿の主人に抜き出してもらった経験があるのでやってもらった。触肢の一部が残ったものの何とか抜き出せたが、後で、北海道でダニに噛まれた男性がダニ媒介脳炎で死亡のニュースを見て、幸いその後何ともなかったので胸をなで下ろした。

6日目、この日は予備日であったが、この日も好天に恵まれたので、まず音更町長流枝林道に行くことにした。ここは、過去2回とも訪れたところで、1回目に色々な種が見られ、良い印象の場所である。9時半過ぎに到着し、林道を歩いたが、期待に反し蝶の姿は少なかった。ただ、1回目に発見した超希少種と言われるカラフトイトトンボが、同じ場所で生息していることを確認できたことは大きな成果であった。

午前中ここで過ごした後、上士幌町三股方面に向かった。いくつかの林道や三股山荘周辺を探索し、カラフトヒョウモン、ホソバヒョウモンなどのほか、途中で出会ったエゾライチョウや、エゾシカなどを撮影した。
宿舎は、6日目と同じ東大雪ぬかびらYH。

7日目、この日は移動日で、富良野吹上温泉に向かう。途中、前回ジョウザンシジミを見た日勝峠近くのポイントに寄ってみたが、蝶の姿はなかった。R274を更に西に進み、日高千呂露川沿いの林道に入った。途中、長年北海道で蝶の観察を続けているという人にあったので、話を聞いたところ、今年はこれまでにないほど数も少なく、見られない種も多いとのことであった。この林道では、前回は、多くの種を見られたが、今回は少なく、その話を実感したが、それでも、エゾツマジロウラジャノメその他、北海道産の代表的な蝶を何種か撮影できた。

天気予報では、曇り後雨ということなので、昼前にここを出発し、富良野に向かったが、途中、ワイパーを高速にしても前が見えなくなるような大雨に出会った。この雨も、目的地の吹上温泉白銀荘に着く頃には止んでいた。今回の遠征で、雨に降られたのはこの時だけであった。宿所の白銀荘の温泉に浸かり、7日目を終了した。

8日目、朝、外は一面の霧。気温も低そうなので、ゆっくり温泉に浸かった後出発した。最初に予定した林道は、陽も射さず、気温も低く蝶の姿は見えなかったので、少し南下し、陽当りの良さそうなオンコ沢に入った。ここで、今回初めてとなるヒメウスバシロチョウなどを撮影し、布礼別川林道に向かった。ここでは、クジョクチョウ、コヒオドシ、その他前回とほぼ同様の種を撮影できたが、個体数は、少なかった。前回、カバイロシジミを見た場所に行ってみたところ、食草のクサフジも少なくなっており、姿は見えなかったが、その後、少し離れた場所で、本種のほか、キバネセセリなどを見ることができた。原始ヶ原への林道にも入ってみたが、蝶の姿はあまり見られなかった。

この日の蝶の撮影は、ここで終わり、折角富良野まで来たのだから、ラベンダー畑を見ておこうと富田ファームを訪れた。今回の遠征では、各所で観光客に出会ったが、ラベンダーが丁度見頃ということもあってかここが最も多かった。
この日も吹上温泉白銀荘で宿泊、温泉を楽しんだ



9日目、7時前に宿を出発し、今回の遠征で初日に訪れた小樽石狩浜に向かった。9時過ぎに到着し、早速カシワ林を探索する。目的のキタアカシジミは全く現れなかったが、ハヤシミドリシジミ、ウラミスジシジミ、ウラジロミドリシジミなどのゼフィルスを見ることができた。

午前中でここを後にし、札幌ふれあいの森公園に行くことにした。ここで、昼食を済ませ、森の中に入った。ここではメスアカミドリシジミなどを撮影した。キタアカシジミに期待し、夕方5時過ぎに石狩浜に再度立ち寄ったが見られなかった。後日談だが、我々の前に、本種を良く知る人が北海道を訪れたが見ることができなかったとのことで、今年はほとんど発生していないようではとのことであった。宿の天然温泉番屋の湯は、石狩湾から雄大な日本海を望める景勝地にあり、露天風呂からは、周りのカシワ林を飛び回るゼフィルスを見ることができた。

10日目、ゼフィルスの開翅写真を撮ろうと、6時前に温泉に浸かり、朝食は弁当を作ってもらい出発、前日のカシワ林に向かった。北海道の朝は早く、既に飛び出しているのもいたが、カシワを叩くと、ハヤシミドリシジミが下に降りてきて、しばらく待って何とか開翅写真も撮れた。その他ウスイロオナガシジミやウラミスジシジミなどを見ることができた。ウラミスジシジミは、独特の白い斑紋のあるシグナタ型で、初めて見る種であった。

9
時過ぎにここを後にし、札幌定山渓方面に向かい、ゼフィルスの好ポイントとして知られる百松沢林道に入った。ここで、地元で、長年このあたりの昆虫調査をしているという人に出会い、話を聞いたところ、やはり今年は異常で、通常見られるアカシジミも見られないほどだということであった。ゼフィルスなら近くの方に良い場所があると教えていただいた場所に向かい、メスアカミドリシジミなどを撮影した後、この遠征最後となる宿舎の石狩浜番屋の湯に帰り、温泉で疲れを癒した。


11日目、最終日、空港近くということで、苫小牧ウトナイ湖周辺を探索することにした。途中、札幌市内藻岩山スキー場ゲレンデに立ち寄った後、ウトナイ湖野生鳥獣保護センター周辺の散策道を探索し、フタスジチョウその他を撮影し、最後にセンター内も見学して、これで全日程を終了、新千歳空港から航空便で広島空港経由、夜11時前に自宅に到着した。
北海道での全走行距離は約1300kmであった。


今年の北海道は、春先の異常気象などで、蝶の個体数は、これまでにない程少なかったようでキタアカシジミ、カラフトルリシジミは見ることはできなかったが、それ以外では、同行のMnさん、Msさんとの連携もあって、初記録種3種のほかほぼ予定した種計49種を撮影できた。



信州遠征記(2016年)-高山蝶を求めて
                                                       蝶その他の昆虫

高山蝶となると、登山が必要で、これまで見合わせていたが、年齢を考えると、あまり後がないので、行くなら今しかないと挑戦することにした。場所は、友人Gmさんの検討で、岳沢に決まった。まだ未撮影のミヤマシジミも見られたらと、両種が見られる時期ということで、7月後半とし、Knさんを加えた3人で出発した。この3人では4回目、私自身では9回目となる信州方面遠征である。

721日(木)晴 
1700自宅まで迎えに来ていただいたGmさんと、次いで新岩国駅でKnさんと合流し、1740山陽自動車道岩国ICを出発した。2030兵庫県龍野西SAで夕食と休息、2230京都南ICを通過、2340滋賀県養老SAで休息をとった。

722日(金)雨〜曇〜晴
途中大雨に遭遇したが、130長野県駒ケ岳SAに着いた時は小雨に変わっていた。ここで仮眠、300に出発、中央自動車道を北へ進み、途中少し回り道となったが、410松本ICを降り、近くのコンビニで朝食と昼食、水分の補給をし、上高地への登り口、沢渡(さわんど)の駐車場まで一気に走った。

上高地への自家用車の乗り入れは禁止されているので、タクシーで上高地の登山出発点に向かった。およそ15km25分の行程である。途中、大正池で停車し、記念撮影をする。朝霧に包まれていた大正池の上方雲間より穂高連峰が見えた。
途中、大雨にも見舞われ、上高地方面の予報も芳しくなかったのでダメだと思っていたが、着く頃には青空が広がっていた。タクシーの運転手さんも今日は晴れると予想してくれた。

555上高地バスターミナル到着。ターミナル広場で朝食を摂り、登山の支度、トイレを済ます。飲み物の補給も行い、615ターミナルを出発した。625明神岳より朝日が昇り始めた。天気は上々である。我々の目的地岳沢小屋までは、健脚で約2時間半、中級クラスのコースとのこと、登山客は、ここをベースに穂高連峰を目指すようだ。

630河童橋を渡り、640岳沢湿原を抜け、645登山口に到着、青空がのぞき絶好の撮影日和となった。直ちに登山開始、周りには高い樹木がそびえ、木の根や石混じりの登山道を進む。7標識(7合目でなく3合目)で休息し更に登る。
6標識地点で視界が開け、ガレ場に出た。穂高連峰は雲で覆われているが西穂高の頂上には晴れ間がのぞいていた。
8
10 5標識(中間地点1,830m)に到着。岳沢小屋の標高は2,170m、あと340m登らねばならない。運が良ければ目指す高山蝶が撮影できるであろう。好天の穂高連峰を仰ぎ見るだけで心が洗われる気持である。残雪も美しい。

No3標識近くの草地で、クモマベニヒカゲとタカネキマダラセセリが見つかり何とか証拠写真を撮影できた。今回の遠征では、タカネキマダラセセリを第一目標にしており、クモマベニヒカゲは、時期的にもう少し後のようなのであまり期待していなかったが、両種に一度に出会えたことで喜びは倍増した。
1標識地点の小屋見峠からは、山の中腹に岳沢小屋が見える。もう少しである。

ガレ場を横切り、最後を登りつめ、930岳沢小屋に到着した。直ちに周りを探索するが、チョウの姿はほとんどない。お花畑まで10分という小さな立札が見つかり登って行ったところ、お花畑が広がっていた。クモマベニヒカゲ、ベニヒカゲ、タカネキマダラセセリなどが飛び回っており、撮影できた。


                 岳沢小屋                            お花畑から上高地河童橋を望む

1150お花畑を後にし、岳沢小屋で30分ほど休憩し下山開始。下り最初のガレ場をぬけた登山道草地ではタカネキマダラセセリ♀に出会えた。さらに、登る際には気づかなかったお花畑が見つかり、そこで、両種をたっぷり撮影することができた。もう少し下ったところでは、ヒメシジミにも出会い撮影できた。
慣れない登山で疲れは最高に溜まっていたが、あこがれの高山チョウの撮影がかない今回の撮影旅行の第一の目的が達成されたのである。

1415 5標識通過、1540岳沢登山口、1600河童橋にたどり着き小休止、売店で冷たい飲み物で乾いたノドを潤した。上高地バスターミナルでタクシーに乗り、1650沢渡駐車場に到着。着かえを済ませ1700松本市内のホテルへ向け出発した。
1815「ホテル花月」に到着、チェックインし温泉に浸かり、近くの居酒屋で祝杯をあげた。

723日(土)曇〜晴、28℃〜25
730朝食、930チェックアウトし、まず近くの松本城を見学。外堀より撮影を手早く済ますと一路山梨県小淵沢を目指す。出発するころには青空が広がっていた。

1030小淵沢IC近くのフラワーガーデンに到着。ここは、以前多くの蝶を見たポイントの近くであり、立寄ったのである。フラワーガーデンには、多くの花が植えられており、ここでは、ホシミスジ、キタテハなどに混じって、クサフジで吸蜜するヒメシロチョウに出会えた。まだ発生したばかりで非常に綺麗な固体であった。本種については、これまで良い写真を撮っていなかったので、時期的にはまだと思っていたこともあり感激した。ここでの1番の収穫であった。
以前、多くの蝶を見ることができたポイントは、オニグルミや雑木などの自然環境がほとんど無くなり、太陽光発電基地に変わっていた。オオムラサキ、ムモンアカシジミ、オナガシジミ、ミヤマカラスシジミ等々がいたのに、もちろんのこと全く見られず、これで注目していた蝶ポイントの一つが消滅したわけで一抹の寂しさをおぼえた。

1200ミヤマシジミの情報があった白洲町の神宮川ほとりの公園に入る。しかし、公園はきれいに草が刈られており、草地がほとんどなくなっていた。しばらく近くの草地も探したが、蝶の姿は見当たらなかった。1300長野県富士見町道の駅蔦木宿で昼食を摂った後、アカセセリの情報のあった霧ヶ峰高原に向かった。

1450、霧ヶ峰高原到着。この草原には前回も来ており、その時はアキアカネばかりでチョウの姿はなかったので不安であったが、今回は、少ないながら目的のアカセセリその他の蝶を見ることができた。その他、Knさんがムツアカネを見つけ、撮影した。このトンボは、標高の高い場所や寒冷地に生息し、北海道では多くみられるそうであるが、思わぬ収穫であった。夕方になるとさすがに曇り、風が出てチョウの姿も少なくなり1645終了する。

1740、霧ヶ峰高原を下り、下諏訪のホテル山王閣に到着。山裾に建てられ諏訪湖が一望できる素晴らしい部屋であった。早速温泉に入り、一日の疲れを癒し、夕食、生ビールを楽しむ。
雲がかなり張り出してきたが、明日の天気は大丈夫のようである。

724日(日)曇〜晴〜曇、20℃〜24℃〜27
朝温泉に入り、715朝食、食後お土産物などを購入。810に出発し、途中、以前ムモンアカシジミを撮影した諏訪市のかんぽの宿に立ち寄った。ムモンアカシジミは見られなかったが、オナガシジミに出会え、撮影することができた。

900長野県を後にし、次の目的地山梨県へ向かった。915中央自動車道・諏訪IC1035大月JC経由で1055山中湖ICを降りる。旧鎌倉往還を富士吉田方面に戻る途中に富士裾野の陸上自衛隊駐屯地がある。施設には入れないが、広大な演習場を土、日曜日には一般市民に解放している。

1120、演習場内のミヤマシジミの生息ポイントに到着。胸の高さまである背の高いススキの原を分け入り、最初にGmさんが本種を見つけた。私にとっては初記録となる種で、特徴的な裏後翅の亜外縁の黒斑内の青色鱗を認めて胸が高鳴った。別の場所でも1頭の♂を撮影することができたが、個体数は少なかった。ここではヒメシロチョウも1頭見つかったが、止まることなく逃げていった。また、野生の雌鹿が出てきたが、人間を恐れることなく悠然と草を食べそのうち草むらの中に消えていった。1250終了、ここを後にした。

本栖湖畔のレストランで昼食を摂り、以前ホシチャバネセセリを撮影した草原に入ってみた。以前に比べて、蝶の姿は少なく、ほとんど諦めかけていた頃、Gmさんから連絡があり、ホシチャバネセセリ、ヤマキチョウなどを撮影できた。


1610全日程を終了。本栖湖畔より139号を南下、朝霧高原を通り静岡県富士宮市に入る。うまい具合に道路沿いに大きな温泉施設「花の湯」があり、汗にまみれた体を洗いサッパリして出発することができた。富士山の登山者が主に利用する温泉のようで、中には有名な登山グッズを売るショップもあり利用客も多かった。1時間ほど入湯、休息した後、1830新富士ICより新東名高速道路に入り、帰路についた。
2000豊田JCで名神高速道路に入り、2045大垣市養老SAで夕食をとり2300まで仮眠。

725日(月)
兵庫県三木SAにて1時間ほど休憩、岡山県吉備SA、広島県福山SA、広島県宮島SAにて小休憩、600岩国ICを降り605新岩国駅に到着した。

全走行距離は、約2000km、運転は、Gnさんと交代で実施、無事遠征旅行を終えた。


大東島遠征記(2016)
                                大東島、沖縄本島で見た蝶     トンボその他の昆虫

ハマヤマトシジミは、沖縄以南の南西諸島で記録はあるが、現在では大東島以外ではほとんど見ることができない種である。
八重山諸島には何回か訪れており、
2015年に訪れた際には、前2014年に西表島など八重山諸島で発生が確認されていた事もあり特に注意したが、見ることはできなかった。

南、北大東島は、沖縄本島の東、約400kmの太平洋上に浮かぶ、珊瑚礁が隆起して形成された島で、周囲がそれぞれ約21km、約14km、すべて断崖絶壁で囲まれており、まさに絶海の孤島である。
台風の通り道であり、シーズンになると必ず耳にする島で、一度は行ってみたいと思っていたが、友人のGさんからのお誘いがあり、行くことにした。


出発は、927日、南、北大東島へ行ったあと、沖縄本島のヤンバル方面に行くことにした。
丁度台風シーズンであり、今年は、
9月に入ってから特に多く、1213141516号と立て続けに発生していた。
16号が22日に温帯性低気圧に変わり、これでしばらく落ち着いてくれればと思っていたが、案に反して、予定の数日前には台風17号の卵が発生し、26日には沖縄の南方に接近、27日には大型の台風になることが予想された。
行けるかどうか前日まで、航空会社などからの情報に気を揉んだが、丁度すれ違う形で行けることになった。


9月27日(火)
7時前に自宅を出発、福岡空港でGさんと合流、沖縄経由で南大東島には
15時頃着いた。

ホテル吉里で手続き後、まず古い情報を元に、大東神社周辺を探索した。
ハイビスカスなどの花の周りをウラナミシロチョウなどが飛んでおり、それらを撮影したあと、ハマヤマトシジミを求めて、サトウキビ畑に囲まれた荒地や脇道に入ってみたが、時たまヤマトシジミを見かける程度で蝶影は少ない。
その内、Gさんから、ハマヤマトの食草であるイヌビユがある場所がわかり、そこでハマヤマトを見たとの連絡が入り、すぐそちらに行ったところ、イヌビユの周りを飛び回る小さな個体が目に入った。
初めて見るハマヤマトシジミである。
写真におさめた後、周りを探したところ別の個体も見ることができた。

           サトウキビ畑                    イヌビユのある荒地

島内には多くの湖沼があり、そのためトンボも今回の遠征目的の一つであったが、南方系のウミアカトンボは、結構多く見ることができた。
夕闇が迫ってきた頃、コフキオオメトンボを求めて、脇道に入って行ったGさんから、採集したとの連絡を受け、行ってみたところ、薄暗い中を飛翔している個体を確認できた。

9月28日(水)

初日に、大東島での目的をほぼ達成できたので、翌日は、折角来たのだから少しは観光も、と少し早めに宿を出て、まず、南側の日ノ丸山展望台に向かった。
看板によれば海抜
63mと高くないが、島全体が平地であるため、ここからは島のかなりの部分が見渡せた。
島の中心部以外はほとんど全域にサトウキビ畑が広がっている。


周辺を探索すると、道筋にはハネビロトンボが行きかい、すぐ近くの脇道に入ると、丁度黄色い花をつけたハブソウが数
10mにわたって植えられており、そこに100頭近くはいると思われる多数のウラナミシロチョウが乱舞していた。
中にはウスキシロチョウやウスイロコノマチョウなども混じっており、しばらく撮影した。
その後昼食をはさみ、大東神社、オヒルギ群落の見られる大池展望台、島の玄関港である西港など観光しながら、レンタカーで島を巡り、イヌビユが生えていそうな荒地があれば寄ってみるといったやり方で探索し、個体数は多くなかったが、何箇所かでハマヤマトシジミを見ることができた。
 
                 大東神社                                 大池展望台

 
          西港に隣接するミレニアムパーク                          旧ボイラー小屋

14
30で南大東島の探索は終わりにし、1530発航空便で10キロ程離れた北大東島に向かった。
宿でレンタカーを借り、近くを回ってみたが、既に遅かったこともあってか、蝶はほとんど見ることができなかった。


9月
29日(

8時に宿を出発、まず近くの西港公園、その南にある上陸公園周辺を探索した。
珊瑚礁で覆われた海岸線は荒々しく、洋上南方には南大東島が望まれ、まさに絶海の孤島と呼ばれるにふさわしい景観であり、初めてここに上陸した人たちの苦労に思いを馳せた。

                 珊瑚礁の海岸線と洋上に浮かぶ南大東島

本島では一時燐鉱石採掘事業が盛んに行われ、多くの労働者が働いていたが、昭和
25年に閉山され、現在では、農業、漁業が産業の中心となっている。
海岸線近くの草地では、ヒメシルビアシジミ、ミナミキチョウなどが見られる程度であった。

島の中心部では、近くで発生したと思われるアオタテハモドキやウスキシロチョウが飛び回っており、ランタナやセンダングサなどの花に来るのを待って撮影した。

その後、島内を巡り探索したが、ハマヤマトシジミについては、イヌビユが群生している荒地2箇所で確認できた。また、灯台のある島の最高峰黄金山(74m)では、本島では迷蝶となるリュウキュウムラサキを見ることができた。

今回の遠征の出発日に、すれ違う形で通り過ぎた台風17号は、その後大型化し、台湾に上陸し大きな被害を与えたが、28日には次の台風18号が発生し、沖縄方面に向かっていた。
大東島で足止めになると、ここからの便は少ないし、、と心配していたが、幸い接近速度が遅かったので、
2916:15北大東島発の航空便で沖縄に行くことができた。

那覇空港から直ちに北に向かい、宿泊予定の国頭村与那JALリゾートオクマには20時頃到着した。

9月30日(金)〜10月2日(日)
沖縄では3泊、過去に訪れている饒波、与那、乙羽岳、八重岳のほか、更に北部の辺野喜ダム周辺などを探索した。
過去の遠征で、ほとんどの種は見ているので、今回は、これまでにあまり良い写真を撮れていない種が見られればと思っていたが、リュウキュウウラボシシジミ、オキナワカラスアゲハ、オキナワビロウドセセリなどは、予想以上に多くを見ることができ、特にリュウキュウウラボシシジミの多さには驚いた。
フタオチョウは時期が少し遅かったようで、確認はできたが、写真は撮ることができなかった。


今回の遠征では、蝶55種、トンボ20種を確認できた。

28
日、南方で発生した台風18号は、その後ゆっくりと北西に進み、我々が沖縄を後にした翌103日に沖縄に最接近しその後日本海を北上した。今にして思えば綱渡りの遠征であった。


北海道遠征記(2017)-春の蝶を求めて-
                                              北海道で見た蝶その他の昆虫蝶    

蝶の撮影で、北海道にはこれまで3回訪れているが、いずれも6月後半〜7月上旬で、春の蝶は未だ見ていない。過去2回行った同じメンバーで、自身としては4度目となる北海道遠征をした。今回の目標は、アポイ岳のヒメチャマダラセセリが第一で、その他、チャマダラセセリ、エゾヒメギフチョウ、エゾヒメシロチョウ、運が良ければ、ジョウザンシジミ、アカマダラなどが見られたらというものである。
友人やネットの情報を参考に、出発日を512日とし、雨などの天候も考慮し、予備日を設けながら7日間とした。

1
日目
早朝5時過ぎに自宅を出発、JR、リムジンバスを乗り継ぎ、広島空港でMsさんと合流し直行便で北海道に向かった。新千歳空港には11時前に到着、ここで前日から北海道入りしていたMnさんと合流した。曇り空で気温は7℃と低く、先行き心配であったが、直ちに最初の探索地としている足寄町に向かった。途中十勝平原SAで休憩、草地を飛び回っていたエゾスジグロシロチョウを見ながら昼食を摂った。

足寄町里見が丘公園近くの目的地には、午後2時頃に到着、気温は8℃と依然として低かったが、時々薄日が差すような天気となった。車を停めた先の道端には食草のキジムシロがたくさん黄色い花を咲かせていた。

少し歩くと、すぐに小さな個体が道端にとまるのが目に付いた。チャマダラセセリだ。いくらでもいるかも、などと話しながら周辺を探したが、その後見たのは別の個体と思われる1頭のみでそのうちにそれも見られなくなった。次の日の夜、宿で一緒になった人の話では、その日、ここを訪れたが、採集者が3人ほどおり、自分はここでは見ることができず、近くのポイントで1頭だけ採集しただけとのことで、この時期寒さもあり、なかなか難しく、我々は、運が良かったということであった。1時間もすると陽もささなくなり他の蝶の姿も見られなくなったので、その日は終了とし、宿泊予定地の糠平温泉に向かった。


2日目朝、外に出てみると、肌寒いが、所々に青空が見られる。これなら期待できそうだ。
8時過ぎに宿を出発、当日宿泊予定の層雲峡の宿の主人からポイント情報が得られるということで、そこに立ち寄った。ヒメギフチョウについては、北の方に何箇所か予定していたが、出来れば近いところで見られたら、との思いであった。何箇所かの候補中、芦別町に山野草がたくさんあるところがあるというので、先ずそこに向かった。近くの民家の庭先で、そこにいた人に聞いたところ、先日もそんな人が来ていた、などと丁寧に場所など教えてくれた。そこには、カタクリ、エゾエンゴサク、オオバナノエンレイソウ、エゾノリュウキンカなどの花が咲いており、ここにとまってくれたらさぞ良い写真が撮れるだろうと期待された。その内エゾヒメギフチョウが現れ、草の上などで時々休むがすぐに飛び去るということが繰り返され、何度かシャッターを切ることはできた。
 
            カタクリ                      エゾエンゴサク
 
        オオバナエンレイソウ                  エゾノリュウキンカ

ただ、いくら待っても花にはとまる気配がないので、次の場所の士別市岩尾内の林道に行くことにした。何箇所か行き、いずれの場所でも数個体見ることができたが、花などはなく飛び回ており、時々、地面にとまるのを撮影するにとどまった。ここではその他スギタニルリシジミ、エルタテハ、クジャクチョウ、コヒオドシ、コツバメなどを見ることができた。

昼近くなったので、芦別町中心地に戻り、弁当を調達し、やはり花が良いと最初の場所に行くことにした。そこでは、その内、運良く♀1頭が、カタクリで吸蜜し始め、念願の写真を撮ることができた。

その後、愛山渓に行こうかとも話していたが、ほぼ目的は達成してしまったし、気温も下がってきたので、3時半頃には終了し層雲峡の宿に戻った。

気温が低く、条件はあまり良くない中、1日目に続き上々の成果で、その夜は、おいしいビールを味わうことができた。

3日目この日は、エゾヒメギフチョウの予備日として北の方に行く予定にしていたが、前日でほぼ目的を達成できたので、北には向かわず、この日の宿泊予定地の帯広に向かい、宿の主人から聞いた、運が良ければジョウザンシジミ、アカマダラなどが見られるかもしれないというポイントなどに立ち寄りながら下ることにした。

8
時半頃に宿を出発、大雪湖畔では、青空に美しく映える雪を抱いた山々が望め、車を停め撮影した。


石北峠を越えた先、留辺蘂町の最初のポイントでは、気温が低いこともあり、エゾスジグロシロチョウ1頭を見ただけであった。

次に向かった幌加ダム周辺では、気温は低いものの少し陽が射してきた。クジャクチョウが現れ、それを撮影したりしていたところ、友人から「いたよ」との呼び声、駆けつけると、ジョウザンシジミが岩の上で開翅しているのが目に入った。前回2016年に初めて本種を見た時はほんの短い時間で、特に翅表などは十分な写真は撮れていなかったが、今回は数頭が、少し飛んではとまるというのを繰り返していたので、表裏とも十分に撮ることができた。ほとんどが羽化して間もない個体であり、幸運に感謝した。

前夜、チャマダラセセリを1頭採集したという人は、タンポポがたくさんある場所で、それにとまっているのを採集したと言っておられたので、その場所に行ってみることにした。1日目には、地面にとまったのしか撮影できていなかったので、あわよくば、花にとまったのを撮りたいとの思いからである。そこには昼過ぎに到着、確かに一面にタンポポが咲いており、期待しながら丁寧に見て回ったが、蝶の姿はなかった。

初日のポイントは近くだったので、前日採集者がいたということで期待はできなかったがもう一度行ってみることにした。初日に見た場所を行き来しているうち、地面にとまっている1頭が目に入った。気温約8℃と寒いこともあり、ほとんど動かないのでなかなかわかりにくかったのである。友人たちに知らせ、しばらくそれを撮影した後、ダメもとで嚇かしたところ運良くすぐ近くのタンポポにとまり念願の写真を撮ることができた。

 
           ギジムシロ                       タンポポ

次に、更に南下し、これまで数回訪れたことのある長流枝内林道に立ち寄った。しばらく見て回ったが、曇りがちになったこともあり蝶はほとんど見ることができなかったので、時間的には早かったが、宿泊予定の帯広市のホテル日航に向かった。

この日は肌寒く、条件はそれほど良くなかったが、羽化したばかりのジョウザンシジミ、花にとまったチャマダラセセリの撮影ができ満足のいく一日であった。

4日目この日は、帯広周辺のチャマダラセセリやジョウザンシジミ探索の予定であったが天気予報は雨であり、蝶は見込めないので、ネットで調べ、帯広市野草園、明治チーズ工場見学に行くことにした。

野草園では、オオバナノエンレイソウが一面に咲き乱れており、その中に、ニリンソウ、シラネアオイその他多くの野草を見ることができた。ここでは野鳥も多く見られ、キビタキ、ゴジュウガラ、アオジなどを撮影した。

 
                  キビタキ                                  コガラ

明治チーズ工場(明治なるほどファクトリー十勝)では、チーズ試食などもあり、丁寧な工場案内で、気持ち良く見学させていただいた。

当初予定していたチャマダラセセリやジョウザンシジミは、両種とも目的を達成しており、気分的には余裕で、蝶とは無縁の一日であったがそれなりに充実した一日だった。

この日も帯広で宿泊した。

5日目この日は、帯広周辺のエゾヒメシロチョウ、ジョウザンシジミなどのポイントをめぐりながら、今回の遠征の第一目的であるアポイ岳のある様似町に移動することにしていたが、天気予報は曇りであまり期待できそうにないので、蝶はあきらめ、観光に当てることにした。

先ず、エゾリスがいるとして知られている音更神社に立ち寄った。ここは野鳥も多く、リスのほかにアカゲラ、オオルリ、シジュウカラなどを撮影した。

 
             エゾリス                       アカゲラ

次に、情報のあった札内川流域のポイントに立ち寄った。しかし、そこは昨年の台風の影響で、1部崖が崩壊しており、道には岩や土砂、倒れた木などが残っており、天候状態も良くなかったことも重なり、蝶の姿は全く見られなかった。すぐに切り上げ南に向かう。

途中、天候はますます悪くなり、時々雨が交じるようになった。これでは蝶は全く望めないが、後のことを考え、ネットで調べた幕別町、広尾町のポイントに立ち寄り、更に、少し遠回りになるが、襟裳岬にも、せっかくの機会だからと、立ち寄った。襟裳岬は、風が強いことで知られ、島倉千代子の歌にもあるとおり、風はヒュルヒュル、波はどんぶりこ、更にガスもかかっており、ほとんど何も見えなかった。体感気温は零下ではと思われるほど寒かったが(実際には6℃)、歌詞の石碑と岬表示の前まで歩いて記念写真を撮り、早々にここを後にした。

 
     断崖下の荒れる海を望む(ガスで見えにくい)                   襟裳岬歌碑、先に「襟裳岬」の表示

様似には4時頃に到着、宿には少し早いので、少し先の観音山公園に行ってみた。遊歩道沿いには、カタクリ、ニリンソウ、オオバナノエンレイソウなどが一面に咲いており、それを撮影しながら時間を過ごした後、5時頃に宿泊予定のプラザ美須々に落ち着いた。この宿は、料理屋を併設(2Fが宿)しており、夕食は店の客と一緒で、なかなかにご馳走であった。この日は、翌日のアポイ岳登山に備えて、早い時間に消灯した。

6日目いよいよ今回の第一目的であるヒメチャマダラセセリのアポイ岳登山である。早朝、カーテンを開け、外を見る。天気予報通り青空が広がっていた。

アポイ岳は(以下ウイキペディア他より)、様似郡様似町かつ日高山脈支稜線西南端に位置し、一等三角点で標高810.5m。山の名の由来はアイヌ語の「アペ・ オ・イ」(火のあるところ)である。山が「幌満橄欖岩」と呼ばれているかんらん岩でできており、特殊な自然体系となっていることにから、1952年に高山植 物帯が「アポイ岳高山植物群落」として国の特別天然記念物に指定された。1981年には日高山脈襟裳国定公園の特別保護区となった。海岸からわずか4キロにそびえるアポイ岳は、海からの濃い霧がたち込め、気温を低下させ、2000メートル級の高山と同じ条件を作り出している。周辺は「幌満カンラン岩体」と呼ばれ、マグネシウムや鉄を多量に含んだカンラン岩で構成された特殊な地質である。これら濃霧と特殊地質の影響により、「蛇紋岩植物」が生育する高山植物の宝庫として有名で、80種以上が確認され、花の百名山となっている。世界中でここしか見ることのできない固有植 物も多数ある。


                  様似町中心地からアポイ岳(正面)に向かう

7時半に宿を出発、アポイ岳ジオパークビジターセンター前に駐車、登山届を提出し、8時に登山スタートする。時々道端のエゾオオサクラソウ、ヒメイチゲ、ミヤマスミレなどを撮影しながら歩を進め、9時過ぎに5合目の小屋に到着した。ここまでは比較的楽で、これなら大丈夫と思っていたが、これからがきつかった。急な登りの連続で、ヒメチャマダラセセリが見られるという7号目馬の背に着くのに約40分かかったがほぼ限界であった。二人の友人は、登山慣れしていて、それほど疲れた様子はなく、特にMnさんは、山頂まで行ってきますと、登っていった。

 
              アポイ岳登山口                               6〜7合目の上り

このあたりには、アポイアズマギクやサマニユキワリなどのこの山特有の花が咲いており、その周辺を中心に探したが、蝶の姿は全く見られない。登山口を出発するときは、青空が広がっていたが、ここでは時々薄いガスもかかり、気温もまだ低く難しいかな、と悲観的な気持ちにもなった。

1時間ほど経った頃、何かが動くのが目に入った。望遠で見ると、ヒメチャマダラセセリだ。しばらく待っているとこちらに飛んできて、足元の地面にとまり、撮影成功。その内、近くのハイマツの裏に隠れてしまい、また30分ほど、全く姿が見られなくなった。この頃、撮影目的で数人が登ってきた。「いますか?」「30分ほど前に1頭出ましたよ。あのあたりにいると思うんですが、、」。皆でその方に注目していたちょうどその時タイミング良く、その1頭と思われる個体が飛び出し、近くの草にとまり皆さんが撮影できた。その頃から別の個体も時々現れ出し、時には花にもとまるようになった。山頂に行ってきたMnさんも合流し、しばらく撮影を堪能、やっと落ち着いたところで、弁当を取り出し、昼食を済ませた。


 
          アポイアズマギク                    サマニユキワリ

この日は、帯広で宿泊することになっていたが、天気も良く、時間があるので、早めに下山し、昨日下見した場所に立ち寄ることにした。12時にポイントを後にし、120分には登山口に到着、トイレ休憩したあとすぐにそこを出発した。

先ず、昨日下見しておいた広尾町大丸山公園に立ち寄った。ここではモンキチョウを数頭見られただけだったので、すぐにここを離れ、次に幕別町に向かった。白銀台スキー場にあたりをつけ、ゲレンデを歩いてみた。最初は、エゾスジグロシロチョウばかりが目に付いたが、しばらく経った頃、飛び方の違うシロチョウが目に付いた。エゾヒメシロチョウに違いないと思い、追いかけるが、全くとまる気配がない。そこで、証拠写真だけでもと飛翔しているのを撮影した。後から見ると、何枚か、それと分かる写真が撮れていた。その内、1頭が、タンポポにとまり、それも撮影できた。4時過ぎまでここで過ごした後ここを出発、宿泊予定の帯広グランドホテルには5時過ぎに到着し今回の遠征最後の夜を迎えた。

6日目、いよいよ最終日、探索は空港近くが良いということで、早朝帯広を出発、札幌にむかった。

2016年に行ったことがある小金湯の百松沢林道に11時前に到着、ここはジョウザンシジミなどが可能性もあるというので入って行ったが、シータテハ、クジャクチョウ、ルリシジミくらいしか見られなかった。

次に、オオモンシロチョウの情報のあった空港近くの駒里に向かった。モンキチョウばかりが目に付いたが、弁当を食べながら、待っていたところ、Msさんから、エゾヒメシロチョウがいるとの連絡が入った。駆けつけると、とまっている♀に♂がまとわりついてお
り、そのうち、♀が産卵を始めた。これらを撮影し、次にMnさんがオオモンシロチョウを見たというあたりで目を凝らしていると、飛び方が違う少し大ぶりのシロチョウが目に付いた。何度も目の前を通過するが、全くとまる気配がないため、また飛翔を狙ってシャッター切った。

これで全日程を終了、新千歳空港から航空便で広島空港経由、夜11時前に自宅に到着した。

北海道での全走行距離は約1500kmであった。

今回の遠征は、前半、北の方だけが比較的天気が良く、エゾヒメギフチョウ、チャマダラセセリ、ジョウザンシジミを撮影でき、この間天気の悪かった南の方も、後半、アポイ岳登山当日から好天に転じ、念願のヒメチャマダラセセリを撮影できたほか、最終日には更に気温が上がり、難しいと思われていたエゾヒメシロチョウ、オオモンシロチョウも見ることができ、ほぼ満点の成果であった。予定が逆だったら、これほどの成果は無かったと思われ、日程を設定したMnさんと幸運に感謝する。       

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八重山諸島紀行(2019)-波照間の記憶-
                                              八重山諸島で見た蝶    


波照間島は、人が自由に訪問できる日本最南端の島である.
南十字星を見ることができ、高那崎海岸に建つ「日本最南端の碑」や「星観測タワー」は観光スポットとなっている。
その島の中心部にある波照間小中学校門壁に「星になったこどもたち」という詩が描かれている。
第二次世界大戦末期、米軍が上陸してくる可能性が強いという理由で、軍の命令で、島民のほとんどが西表島の南風見田(ハエミダ)に強制疎開させられた。
南風見田は、当時マラリヤが最も多く発生していた場所であり、そのため、波照間から移った人のほとんどがマラリヤに罹り、その約1/3が死亡したということである。
波照間港から集落に向かう途中、西表南風見田を向いて学童慰霊碑が建てられており、ここには当時の波照間国民学校の児童323名がマラリヤに罹患し、66名が亡くなったということが記されている。
学校門壁の詩は、南風見田に疎開させられマラリヤに罹り死んでいった子等の無念さに心を馳せ、悼む気持ちを表したものであり心打たれる。

 「南十字星、波照間恋しいと星になったみたまたち、ガタガタふるえるマラリヤで、
  ひとりふたりとほしになる、苦しいよ、さむいよ、お母さん、帰りたい、帰りたい波照間
  南風見の海岸に、きざまれている忘れな石ということば、戦争がなければこどもたち、         
  みんな楽しくあそんでた、さびしいよ、いたいよ、お父さん、帰りたい、帰りたい波照間へ
     <中略>  
        66名、知らない世界へ逝ってしまったこと忘れない
         静かに、やすらかにねてください、平和な平和な波照間に」


                  波照間小中学校と詩がかかれた壁 

 
  西表島南風見田「忘勿石」から波照間島を望む          西表南風見田を向いて立てられた学童慰霊碑

西表島の南風見田は、遠征時必ず訪れる場所で、波照間を見渡せる海岸には、「忘勿石(わするないし)ハテルマ シキナ」と刻まれた石があり、そのすぐ近くにはこの悲劇を後世に伝えるため「忘勿石之碑」が建立されている。
今回の遠征ではこれら両方の地を訪れ、戦争の悲惨さをあらためて教えられた。
八重山における戦争被害は、「空襲による死者174名、マラリヤにより死亡した者3647名(ウィキペディア)」というように、戦闘行為の犠牲よりマラリヤの犠牲者数がはるかに上回ったということで、各所にマラリヤ犠牲者の慰霊碑が建てられている。   
八重山諸島では、台湾などから飛来する迷蝶を見られる可能性が高く、それが今回の目的の一つであったが、2018年に与那国島で発生し話題となっていたコモンタイマイを撮影でき、これが今回の最大の成果であった
2009年に石垣島、西表島、小浜島で見て以来永らく見ることがなく、2018年に久しぶりに石垣島で確認できたマルバネルリマダラは、、今回の遠征ではほとんどの島で見ることが出来るほどに分布が拡大していた。その他タイワンモンシロチョウ、タイワンヒメシジミ、ウスアオオナガウラナミシジミ、シロウラナミシジミ、イワサキタテハモドキ、タイワンキマダラなどは、今回も見ることができ、一方、2009年に石垣島で初めて見たカバタテハは、以降、一度も見ていないし、2009年に石垣島で初めて確認し、その後、2011、2014年には石垣島、西表島で見ることができたキミスジは、以後は確認できておらず今回も見ることができなかった。

      蝶その他の昆虫の写真はこちら  →  八重山諸島で見た蝶    八重山諸島で見たその他の昆虫蝶 

調査報文はこちら